ベトナムでの営業方法はどんなものがある?代理店活用・直販・ECまで徹底比較します

ベトナムでの営業方法はどんなものがある?代理店活用・直販・ECまで徹底比較します

ベトナムでの営業方法|代理店活用・直販・ECまで徹底比較

ベトナムでの営業展開を検討する企業に向けて、代理店活用・直販・ECなどの主要な方法を比較解説します。それぞれ、メリット・リスクが異なるため、自社に合った戦略選びが重要です。

本記事では、各営業方法の特徴や注意点を整理し、現地市場で成果を高めるための判断材料をご紹介します。

目次

ベトナム営業の基本と市場

ベトナムで営業を進めるには、まず現地の市場構造や商習慣を理解することが大切です。商談の進め方や契約の慣行、流通の仕組みは日本と大きく異なるためです。

その違いを把握しないまま進出すると、多くの日系企業が経験しているように、予想外の課題に直面し、計画通りに成果を得られないことがあります。

ベトナムの権力格差指数70点が示す組織文化

ベトナムでの営業が日本と大きく異なるのは、権力格差指数が70点と高く(日本は54点)、上下関係を強く受け入れる社会構造を反映しているためです。権力格差指数とは、組織や社会における上下関係の受け入れられ方を数値化した指標で、数値が高いほど上位層の権威が強く働きます。

こうした背景から、意思決定は上層部に集中し、商談前には信頼関係を築く時間が重視されます。さらに、面子を大切にする文化や、人間関係をデータよりも重んじる傾向もあります。そのため、日本式の計画重視や即決型のアプローチでは成果が得にくく、段階的に関係を深め、キーパーソンへ丁寧に働きかける姿勢が成功を左右する要素となります。

ベトナムの小売・流通チャネルの特徴(トラディショナル vs モダントレード)

ベトナムの流通は、大きくトラディショナルトレード(TT)とモダントレード(MT)の二つに分けられます。トラディショナルトレードは約9,000の公設市場と約220万の小規模店で構成され、現在も流通の中心的な役割を担っています。

一方、モダントレードはスーパーマーケットやコンビニエンスストアを主体に都市部で急速に拡大しています。そのため、消費者層や商品カテゴリーによって両者を使い分ける必要があり、効果的な営業戦略を立てるには双方への対応が欠かせません。

ベトナム消費者の購買傾向

ベトナムの消費者は価格に敏感でありながら、近年は品質への関心も高まっています。背景には中間所得層の拡大があり、その結果、単純な価格競争から付加価値を重視する購買行動へと移行しています。EC利用者は2021年時点で約5,460万人に達し、オンラインショッピングは日常的な購買手段として定着しました。

また、購入前に口コミやSNSで情報を集める傾向が強く、ブランドへの信頼が形成されるまでには時間を要します。ただし、一度信頼を得られれば、長期的に安定した顧客として関係を築ける可能性が高い点も特徴です。

主要なベトナム営業方法(チャネル別)

ベトナム市場で営業を展開する際には、代理店を活用する方法から自社で直販を行う方法まで、複数の選択肢があります。それぞれの手法には異なる特徴と利点があり、企業の規模や扱う商材に合わせて選ぶことが重要です。

代理店・販売パートナー方式

代理店方式は、現地のネットワークを活用して市場参入のリスクを抑えられる方法です。ベトナムでは、多くの販売代理店が輸入や小売など複数の業態を兼ねており、そのため幅広い顧客基盤へアクセスできる利点があります。

また、商慣行や規制に詳しいパートナーと協力することで、より円滑に市場展開を進められます。ただし、財務状況や業界での実績に加えて、企業文化との相性も長期的な協業を左右する重要な要素となるため、パートナーの選定には慎重さが求められます。

委託販売方式(ショップへの委託)

委託販売は、既存の小売店舗に商品を預けて販売を任せる方法です。初期投資を抑えつつ市場の反応を確認できるため、特に消費財や日用品の分野では、有効な手法として利用されています。

ベトナムでは家電量販店やスーパーマーケットチェーンで広く行われており、売上実績に応じて在庫を柔軟に調整できる点が特徴です。ただし、成果は店舗側の販売努力に左右されるため、適切なマージン設定や販促支援の仕組みを整えることが、持続的に成果を上げるうえで重要な要素となります。

直販(自社営業チーム/駐在/拠点設置型)

直販方式は、自社で営業チームを構築し、顧客に直接販売する方法です。顧客と直接やり取りできるため、きめ細かなサービス提供が可能になり、利益率を高めやすい点が特徴です。

ジェトロの調査では、ベトナムに進出している日系企業の約56%が事業拡大を計画しており、現地拠点の設置に対する関心が強まっています。ただし、人材採用や法務手続きなど初期コストが大きく、商習慣や労働法制の理解が必要となります。そのため、中長期的な展開を視野に入れる企業に適した方法といえます。

EC・オンライン営業(B2B/B2C)

EC営業は、急速に成長するベトナムのデジタル市場を活用する方法です。2024年のEC市場規模は250億ドルに達し、前年比で20%成長しています。

B2C分野ではShopeeLazadaといったマーケットプレイスが主流となり、B2B分野でもデジタル化が進展しています。オンライン営業の強みは、地理的な制約を超えて幅広い顧客にリーチできることと、初期投資を比較的抑えられる点にあります。

ただし、偽造品への対応やサイバーセキュリティ、物流管理などの課題もあり、信頼を確保する仕組みづくりが成果を支える重要な要素となります。

ベトナムIでの営業プロセス設計とアプローチ手法

ベトナムで効果的に営業を展開するには、現地の商習慣に合わせた段階的なプロセス設計が避けて通れない要素です。

信頼関係を築くことが商談の土台となり、その後の条件交渉や契約締結を円滑に進められます。

初期接触(情報提供・SNS/チャット活用)

ベトナムでも、デジタルを使った発信は、営業を始めるうえで欠かせない基本の手段です。現地ではFacebookZaloなどのSNSがビジネスコミュニケーションにも広く利用されており、これらを通じた発信が効果的です。

また、チャットアプリによるリアルタイムでのやり取りも一般的で、迅速な応答が信頼構築の第一歩となります。統計では、ベトナムのインターネット利用者は約7,980万人に達しており、そのためデジタルチャネルで接点をつくることは営業活動に不可欠な要素となっています。

信頼構築とヒアリング

ベトナムで信頼を築くには、時間をかけて関係性を育てることが基本です。現地では対面での会合が重視され、複数回の訪問を通じて少しずつ信頼を深めていきます。

ヒアリングでは相手企業の背景や課題を理解しようとする姿勢が欠かせず、一方的な商品説明ではなく顧客の声を丁寧に引き出すことが大切です。さらに、意思決定には複数の関係者が関わるため、組織全体と良好な関係を築くことが契約に進むための前提となります。

商談設定と見積もり

商談を進める際には、現地の商習慣に配慮した対応が欠かせません。ベトナムの企業は上層部の承認を重視する傾向が強く、最終的な決定権を持つ人物と直接話す機会を確保することが重要です。

日本でも承認プロセスは存在しますが、現場担当者や中間管理職にある程度の裁量があり、稟議や根回しを通じてスムーズに上へ進むことが多いのが特徴です。一方でベトナムは、担当者レベルで合意があっても、経営層の判断がなければ契約に進みにくいという違いがあります。

契約交渉・契約形態の注意点

ベトナムで契約交渉を行う際には、社会主義市場経済に特有の法制度と強行法規の存在を理解しておくことが欠かせません。現地では契約自由の原則が十分に浸透していない場合があり、「この内容はどの法律に定められていますか」と問われる場面もあります。

国際取引では、準拠法や契約言語、紛争解決機関を自由に選べますが、ベトナム税務局などに提出する場合はベトナム語版が必要です。また、契約の有効性を確保するためには、署名者が法定代表者であるか、そうでない場合は委任状の有効性や権限の範囲を確認することが重要です。

契約条項の注意点(納期・支払い・解約)

ベトナムの契約条項では、違約金の上限が契約義務額の8%と法律で定められており、この範囲を超える条項は実際に執行することが困難です。

支払いスケジュールは項目別やマイルストーンごとに分割して設定することで、一部の問題が全体の資金回収に影響するリスクを抑えられます。納期遅延に対する遅延利息は年利20%まで設定できますが、実効性を確保するには年利10%前後に抑える形が適切とされています。

契約書類のローカル言語対応

ベトナムでは、法律で明記された一部の契約類型を除き、契約書をベトナム語で作成する義務はありません。ただし、裁判や仲裁の手続きはベトナム語で行われるため、実務上はベトナム語版の契約書を用意することが極めて重要です。

国家機関へ提出する際には署名のあるベトナム語版契約書の正本が必要で、公証が必要な契約でも同様にベトナム語版の提出が求められます。二言語契約を作成する場合には、どちらの言語を優先するかや翻訳の整合性を明記し、法律用語に詳しい翻訳者によるクロスチェックを行うことが欠かせません。

ベトナムで営業を成果につなげるための戦略

ベトナム市場での営業成功には、戦略的な要素を体系的に組み合わせる必要があります。適切なパートナー選定から市場適応まで、各要素の最適化が持続的な成果創出の基盤となります。

テストマーケティングと段階展開

ベトナム市場への参入では、リスクを抑えながら試験的に展開する段階的なアプローチが効果的です。まず特定の地域や一部の商品だけを対象にしたラインナップで市場の反応を確認することで、本格展開に向けたリスクを事前に把握できます。

実際に多くの企業がホーチミンやハノイといった主要都市で試験販売を行い、その結果を踏まえて全国へと展開を広げています。この方法により、現地消費者のニーズをつかみ、商品やサービスを最適化できます。

ローカライズと差別化戦略

ベトナム市場で成果を上げるには、現地消費者のニーズに合わせたローカライズ戦略が欠かせません。言語対応に加えて、文化や生活習慣を踏まえた商品やサービスの設計が重要です。

差別化の面では、日本の品質や技術力を強みとして活かしつつ、現地の価格感覚に合ったポジショニングを取ることが求められます。調査では、内需型企業において日本ブランドや品質の訴求が効果を示しており、独自性を明確にすることが競争優位につながっています。さらに、現地パートナーと協力して市場特性を深く理解することも、長期的な成功を支える要素となります。

リスク管理(為替・規制・政治・自然災害)

ベトナムで事業を展開する際には、多面的なリスク管理体制を整えることが欠かせません。

為替リスク
ベトナムドンが長期的に下落傾向にあるうえ、近年は急激なドル高・ドン安の動きも見られます。さらに、外貨建て取引には外貨収入が前提となるなど、為替管理制度の制約を考慮する必要があります。

規制リスク
短期間で方針が変わる法律改正が課題となっています。その影響で、承認された事項が覆される場合もあり、税務や法務の処理に支障をきたすケースが少なくありません。さらに近年は、移転価格調査や関税手続きの厳格化が進んでおり、企業の対応負担が一段と増しています。

政治リスク
社会主義体制による安定性は評価されていますが、中央政府と地方政府で政策の重点が異なる場合があります。そのため、地域ごとに施策が変わる可能性を踏まえ、事業計画を柔軟に調整する姿勢が重要です。

自然災害リスク
中部地域が台風の通り道となるため、建屋の屋根が損壊するなどの被害が発生しています。さらに、断水や水不足による工業団地への供給制限も起きており、操業への影響を踏まえたBCP策定が不可欠です。

成功・失敗事例から学ぶベトナムでの営業のポイント

ベトナム市場での営業成功には具体事例からの学びが重要です。成功企業の戦略と失敗企業の課題を分析することで、効果的な営業展開の要素が明確になります。

成功事例|商品・企業の具体ケース

ベトナム市場で成果を上げている代表的な事例として、味の素の参入戦略があります。同社は1981年に進出し、現地の食習慣を徹底的に調査したうえで、ベトナム向けに風味調味料「Aji-ngon」を開発しました。現地の味覚に合った商品を投入し、段階的に販売網を拡大した結果、調味料市場でトップシェアを獲得しています。

また、製造業では住友電装が人材育成と技術移転に力を入れ、現地スタッフとの信頼関係を基盤に事業を拡大しました。従業員が安心して働ける環境を整えたことが、長期的な成長を支える要因となっています。

これらの成功企業に共通するのは、現地のニーズを丁寧に汲み取り、それに応じて柔軟に適応すると同時に、長期的な信頼関係を大切にしている点です。こうした姿勢が、持続的な成果につながっています。

失敗事例|共通する落とし穴

ベトナム進出に失敗する企業には、いくつかの共通する課題があります。最も多い要因は、十分な市場調査を行わずに進出することで、その結果として売上計画の遅延や予想以上の固定費負担が生じます。また、日本での成功体験をそのまま持ち込もうとする企業も多く、現地の商習慣や消費者ニーズとのずれが大きな障害となっています。

加えて、複雑で頻繁に改正される現地法令への対応不足や、パートナー企業との情報共有が不十分なことも撤退につながる要因です。特に中小企業では、販売先の確保が難しいことや、現地スタッフの管理体制が整わないことが深刻な課題となっています。これらの失敗事例は、進出前に十分な準備と現地適応を行うことの重要性を示しています。

ベトナム営業の支援サービス・リソース

ベトナム市場での効率的な営業展開には、適切な支援サービスとリソースの活用が重要です。現地の専門性を持つ各種サービスを組み合わせることで、リスクを最小限に抑えた市場参入が可能になります。

日系コンサル・営業代行サービス

ベトナムでの営業活動では、現地の商習慣や文化の違いに適応することが大きな課題となります。その解決策の一つが、営業代行サービスの活用です。現地事情に通じた専門家や営業スタッフがサポートすることで、言語や文化の壁を乗り越え、効率的な営業展開が可能になります。

実際に、多くの日系企業が市場調査から営業活動まで一貫した支援を提供しており、駐在員を自社で派遣する場合と比べてコストを大幅に抑えられる点も強みです。

公的支援制度・補助金

ベトナム進出を検討する際には、公的支援制度を活用することで初期負担を軽減し、営業活動をスムーズに進められます。ジェトロでは「新輸出大国コンソーシアム」を通じ、中堅・中小企業向けに伴走型の支援を提供しています。

環境関連分野では環境省のJCM制度、社会課題解決型ビジネスではJICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業なども利用可能です。さらに自治体レベルでも市場調査費用や現地法人設立費用を補助する制度があり、準備段階のリスクを抑えることにつながります。これらはいずれも申請要件や期限があるため、早めの情報収集と計画的な準備が必要です。

地調査会社・データベース

ベトナムでの効果的な市場調査には、現地の商習慣や消費者行動を深く理解した専門的なアプローチが必要です。現地調査会社を活用することで、消費者調査から業界分析、競合企業の動向まで幅広い情報収集が可能になります。

また、企業データベースを活用した潜在顧客の特定や信用調査も、事業戦略の策定において重要な役割を果たします。

ベトナム営業をこれから始める企業向けチェックリスト

ベトナム市場での営業活動を成功に導くには、体系的な準備と継続的な改善が不可欠です。実用的なチェックリストと指標管理により、効率的な営業展開と持続的な成果創出を実現できます。

営業開始前の準備チェックリスト

ベトナムでの営業開始前には、法務・マーケティング・運営の各分野で体系的な準備が必要です。現地の法制度に適合した書類準備と市場調査の完了、効果的な販売体制の構築が成功の基盤となります。以下が営業開始前に確認が必要な主要項目です。

法務・ライセンス関連

□ 投資登録証明書(IRC)の取得
□ 企業登録証明書(ERC)の取得
□ 事業分野に応じた事業ライセンスの取得
□ 営業許可証の申請・取得(小売業等で必要)
□ 契約書のベトナム語翻訳・公証完了
□ 労働許可証の申請準備(駐在員派遣の場合)

市場調査・マーケティング

□ ターゲット顧客層の明確化と市場規模の把握
□ 競合他社の価格・サービス分析
□ 現地商習慣・購買行動の調査結果取得
□ 販売価格設定の妥当性検証
□ マーケティング資料のローカライズ
□ ブランド名・商標の現地適合性確認

販売・運営体制

□ 販売チャネル(代理店・直販・EC)の選定
□ 現地パートナー企業との契約
□ 物流・配送ルートの確保
□ 支払いシステム(銀行口座・決済手段)の整備
□ カスタマーサポート体制の構築
□ 在庫管理システムの準備

改善サイクルの回し方

効果的な改善サイクルには、現地情報の継続的な収集と柔軟な戦略修正が必要です。

ベトナムでは法規制の変更や市場環境の変化が頻繁に発生するため、現地パートナーや業界団体からの情報収集を定期的に行う体制が重要となります。改善の実行においては、小規模なテスト実施から始めて効果を検証し、成功した施策を段階的に拡大する手法が有効です。

また、現地スタッフからのフィードバック収集と日本本社との情報共有体制を整備することで、より実効性の高い改善策を立案できます。失敗事例の蓄積と共有も重要で、同様の問題を避けるための組織学習につなげることが持続的な成長の鍵といえるでしょう。

まとめ

ベトナムでの営業には代理店活用・直販・ECといった複数の方法があり、それぞれに利点と課題があります。代理店方式は現地ネットワークを生かしやすく、直販は情報収集やブランド統制に強みがあり、ECはコストを抑えながら幅広い市場に接点を持てる手段です。

重要なのは自社の目的や商品特性に合わせて方法を選び、柔軟に組み合わせることです。本記事が営業方法を検討する際の整理材料となれば幸いです。なお、複雑な契約や法規制に関わる部分については、現地事情に詳しい専門家の支援を受けることで長期的な安心につながります。

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