ベトナム現地法人の設立手順と費用|2026年完全解説
海外進出を検討する企業が現地法人設立に踏み切ろうとするとき、最初の壁となるのが「何から始めればよいかわからない」という手順の不透明さです。書類の種類・提出先・費用感・期間の目安など、情報が断片的で全体像をつかみにくいと感じる担当者は少なくありません。
本記事では、ベトナム現地法人の設立に必要な全手順を2026年時点の最新制度に基づいて整理します。必要書類の一覧から費用の内訳、設立期間の目安、よくある失敗パターンまで、意思決定者が押さえておくべき情報を体系的に解説します。
なお、本記事は2026年6月時点の情報をもとに執筆しています。制度変更が生じる場合があるため、最終確認は専門家にご相談ください。
こんな方にオススメ
- ベトナムへの現地法人設立を初めて検討している中堅・大企業の経営者・役員
- 海外事業部として設立コストやスケジュールの概算を把握したい担当者
- 過去に設立手続きで行き詰まり、改めて正確な手順を確認したい方
この記事を読むと···
- ベトナム現地法人設立の全体フローと各ステップの要点が理解できる
- 設立費用の内訳と期間の現実的な目安を把握できる
- よくある失敗パターンと、その回避に必要な対策がわかる
目次
ベトナム現地法人の設立前に知っておくべき基礎知識
現地法人の設立手続きに着手する前に、ベトナムの投資環境と法人形態の基本を整理しておくことが重要とされています。制度の枠組みを理解しないまま手続きを進めると、後から変更が生じて費用と時間が増大するリスクがあります。
法人形態の選択:有限責任会社と株式会社の違い
ベトナムで外国投資家が選択できる主な法人形態は、有限責任会社(LLC)と株式会社(JSC)の2種類です。中堅企業が単独進出する場合、手続きの簡便さと管理コストの低さから、1人社員の有限責任会社が選ばれる傾向があります。一方、現地パートナーとの合弁や将来的な株式公開を視野に入れる場合は株式会社形態が検討されます。
どちらの形態を選ぶかは、事業内容・出資比率・将来の資金調達計画によって異なります。設立後に形態変更は可能ですが、手続きコストと時間がかかるため、進出前の段階で専門家とともに慎重に検討することが望ましいとされています。なお、形態によって求められる最低資本金の目安も異なるため、業種ごとの規制と合わせて確認が必要です。
外資規制と業種ライセンスの確認
ベトナムは2014年の企業法・投資法改正以降、外資の参入可能業種を広げてきましたが、一部の業種には外資出資比率の上限が設けられています。流通・小売・教育・医療など特定分野では、外資100%での参入が制限される場合があります。また、飲食・製造・不動産など業種によっては、投資登録証明書(IRC)とは別に追加ライセンスの取得が求められます。
業種ライセンスの有無を事前に確認せずに手続きを進めると、設立後に営業開始が遅れるケースが一般的に見られます。VACANCE VIETNAMでは、事業内容に応じた規制チェックを進出前の診断フェーズで実施しており、見落としを防ぐ体制を整えています。
ベトナム投資環境の現状(2026年時点)
ベトナムは人口約1億人を抱える東南アジア有数の市場として、引き続き日系企業の進出先として注目されています。製造業に加え、近年はIT・サービス業の進出も増加する傾向にあります。一方で、2025年以降は労働コストの上昇や行政手続きの電子化対応など、新たな変化も生じており、最新情報を踏まえた判断が求められます。
投資環境の変化は手続き面にも影響するため、数年前の情報をそのまま利用することにはリスクが伴います。2026年時点では、国家投資ポータル(NSI)を通じたオンライン申請の活用が推進されており、書類の提出ルートが従来と異なる場合があります。
ベトナム現地法人の設立手順:全体フローと各ステップ
現地法人設立の全体フローは、大きく分けて「投資登録証明書の取得」「企業登録証明書の取得」「事業開始後の各種手続き」の3段階で構成されます。各段階で必要な書類・窓口・期間が異なるため、ステップごとに要点を把握しておくことが重要です。
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STEP 1:事前準備・業種規制チェック・資本金計画
最初のステップは、設立前の調査と計画策定です。具体的には、①進出業種に外資規制や業種ライセンスが適用されるかの確認、②設立する法人形態(LLC or JSC)の選択、③資本金額の決定、④事務所所在地の選定、の4点が主な作業です。
資本金の額は、ベトナム法上「最低資本金」の規定がない業種が多い一方、業種によっては法定最低額が定められています。また、実際の事業運営コスト(賃料・人件費・設備投資など)を考慮した上で、過少資本にならないよう計画することが重要とされています。資本金が少なすぎると、後から増資手続きが必要になり、時間とコストが発生する場合があります。
事務所所在地は、IRCの申請書類に明記する必要があります。工業団地内への進出か都市部のオフィスかによって、手続きの窓口や審査スピードが異なる傾向があります。
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STEP 2:投資登録証明書(IRC)の申請・取得
投資登録証明書(IRC:Investment Registration Certificate)は、外国投資家がベトナムで事業を行うために最初に取得する公的証明書です。申請先は、進出先の省・市を管轄する計画投資局(DPI:Department of Planning and Investment)または工業団地管理委員会(進出先が工業団地の場合)となります。
IRCの審査期間は一般的に15〜30営業日とされていますが、業種の複雑さや提出書類の完成度によって前後する場合があります。申請書類に不備があると補正要求が発生し、その分期間が延びる点に注意が必要です。2026年時点では、国家投資ポータル(NSI)を通じたオンライン申請が推進されており、書類提出の一部が電子化されています。
申請に必要な主な書類は後述の「必要書類一覧」セクションで整理しています。
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STEP 3:企業登録証明書(ERC)の申請・取得
IRC取得後、続いて企業登録証明書(ERC:Enterprise Registration Certificate)を申請します。ERCはいわゆる法人登記にあたるもので、取得によって法的に法人格が付与されます。申請先は企業登録局(Business Registration Office)で、IRC取得済みの場合、審査期間は比較的短く、一般的に3〜5営業日程度とされています。
ERC申請時には、定款・社員(株主)のパスポートコピー・法定代表者の情報などが必要です。定款の内容は後の経営・意思決定に直結するため、定型フォームをそのまま使用するのではなく、事業計画に沿った内容にカスタマイズすることが推奨されます。
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STEP 4:法人印鑑作成・銀行口座開設・資本金送金
ERC取得後、実務的な営業開始に向けた準備を並行して進めます。法人印鑑は公的書類への捺印に必須であり、ERCの写しをもとに作成します。かつては公安機関への届出が必要でしたが、2015年の企業法改正以降は届出不要となり、作成から使用開始までの手続きが簡略化されています。
法人銀行口座の開設は、資本金の受け入れおよび日常の資金決済に必要です。日系銀行のベトナム現地法人やベトナム現地銀行を選択できますが、口座開設の審査期間や必要書類は金融機関によって異なります。
口座開設後、資本金の払い込みはERC取得から90日以内に完了させる義務があります。この期限を超過すると罰則の対象となる場合があるため、スケジュール管理が重要です。
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STEP 5:税務登録・社会保険登録・その他届出
ERC取得後、速やかに税務局への届出を行い、法人税・付加価値税(VAT)の申告体制を整える必要があります。2026年時点では電子税務システムへの登録が義務化されており、紙ベースの申告から電子申告への移行が進んでいます。
従業員を雇用する場合は、社会保険・健康保険・失業保険への加入登録も必要です。外国人従業員の労働許可証(ワークパーミット)取得も、採用開始前に手続きを完了させる必要があります。これらの手続きは並行して進められるものが多いため、スケジュールを一覧化して管理することが推奨されます。
ベトナム現地法人の設立に必要な書類一覧
設立手続きで提出する書類は、IRCとERCのそれぞれで異なります。不備があると審査が止まるため、事前に正確なリストを把握しておくことが重要です。以下に主要書類をまとめています。
| 書類名 | 対象手続き | 備考 |
|---|---|---|
| 投資登録申請書 | IRC申請 | 所定フォーム使用・ベトナム語 |
| 投資家(法人)の設立証明書・定款 | IRC申請 | 公証・アポスティーユ + 認定翻訳が必要 |
| 投資家(法人)の財務証明書 | IRC申請 | 直近2期分の監査済み財務諸表など |
| 事務所賃貸借契約書(予約書含む) | IRC申請 | 建物の法的証明書のコピーも必要 |
| 法定代表者のパスポートコピー | IRC・ERC両方 | 有効期限に注意 |
| 会社定款(ベトナム語版) | ERC申請 | 法定代表者・社員・事業目的等を明記 |
| 社員(出資者)リスト | ERC申請 | LLC(複数社員)の場合に必要 |
| 事業許可申請書(業種ライセンス) | 業種ライセンス申請 | 業種によって内容・提出先が異なる |
書類の認証・翻訳に関する注意点
日本で作成した書類(定款・登記事項証明書・財務諸表など)をベトナムの手続きに使用する場合、アポスティーユ(Apostille)または公証・外務省認証が必要です。さらに、認定翻訳会社によるベトナム語翻訳も義務付けられています。この認証・翻訳プロセスには一般的に2〜3週間程度かかる場合があるため、全体スケジュールの中で早めに着手することが推奨されます。
書類の認証が間に合わず申請が遅延するケースは、初めて海外進出を手がける企業で特によく見られます。VACANCE VIETNAMでは、書類チェックリストの提供と認証プロセスの段取り支援を通じて、こうした遅延リスクの軽減をサポートしています。
財務証明書の準備で注意すべきポイント
IRC申請では、投資家(日本の親会社)の財務健全性を示す書類の提出が求められます。具体的には直近2期分の監査済み財務諸表が一般的ですが、審査当局の判断によって追加資料の提出を求められる場合があります。設立する法人の資本金規模と親会社の財務状況が釣り合っていない場合に指摘を受けるケースもあるため、事前に専門家に確認することが望ましいとされています。
ベトナム現地法人の設立費用の内訳
設立費用は、公的手数料・専門家報酬・事務所費用など複数の項目で構成されます。以下の表は一般的な費用感を示したものですが、業種・所在地・支援体制によって実際の金額は前後する場合があります。
| 費用項目 | 目安(参考値) | 補足 |
|---|---|---|
| IRC申請手数料 | 数万円相当(公的費用) | DPIへの申請料は比較的低額 |
| ERC申請手数料 | 数万円相当(公的費用) | 企業登録局への申請料 |
| 書類認証・翻訳費用 | 10〜30万円程度 | 書類の数・翻訳量により変動 |
| 現地コンサルタント・弁護士報酬 | 50〜200万円程度 | 業種複雑性・サービス範囲で大きく変動 |
| 事務所初期費用(賃料・敷金など) | 50〜300万円程度 | 都市・エリア・広さにより大幅に変動 |
| 業種ライセンス取得費用 | 業種による(数十万〜) | 小売業・飲食業等は別途申請が必要 |
| 銀行口座開設・初期入金 | 資本金額に依存 | 資本金の払い込みは90日以内に必要 |
コンサルタント費用の相場と選び方
設立手続きの代行を現地コンサルタントや法律事務所に依頼する場合、その費用は手続きの範囲・業種の複雑さ・日本語対応の有無などによって大きく異なります。一般的に、基本的な設立代行(IRC+ERC取得まで)で50〜100万円程度が目安とされることが多い傾向がありますが、業種ライセンスや労務手続きを含むフルパッケージでは200万円を超えるケースも見られます。
費用だけでなく、担当者の実績・日系企業への対応経験・コミュニケーションの円滑さも選定基準として重要です。特に業種ライセンスが絡む案件では、実際に審査をくぐり抜けた実績を持つ専門家を選ぶことが、無用なトラブル回避につながると言われています。
設立後の継続的な運営コストも見据える
設立費用だけでなく、設立後の年次費用も事前に試算しておくことが重要です。具体的には、会計・税務申告費用(月次・年次)、監査費用(要件を満たす場合)、賃料・光熱費、従業員の社会保険負担分などが継続的に発生します。進出初期は売上が立ち上がるまでのランウェイコストが膨らみやすいため、運転資金の計画も含めて現実的な収支シミュレーションを作成することが推奨されます。
設立期間の目安とスケジュール管理
ベトナム現地法人の設立に要する期間は、業種や手続きの複雑さによって異なりますが、一般的に最短2〜3ヶ月、通常3〜4ヶ月程度が目安とされています。業種ライセンスが必要な場合はさらに延長される場合があります。
フェーズ別の標準スケジュール
設立スケジュールを大まかに整理すると、以下のような流れになります。
| 事前準備フェーズ(2〜4週間) | 業種規制確認・法人形態選択・資本金計画・事務所候補選定・書類の認証・翻訳着手 |
| IRC申請〜取得フェーズ(3〜6週間) | 申請書類の最終確認・提出・審査・補正対応・IRC発行 |
| ERC申請〜取得フェーズ(1〜2週間) | 企業登録申請・発行(IRC取得後) |
| 事業開始準備フェーズ(2〜4週間) | 印鑑作成・銀行口座開設・資本金払い込み・税務登録・社会保険登録 |
| 業種ライセンス取得(並行〜2〜3ヶ月追加) | 業種によりIRC申請と並行、または別途申請が必要 |
上記を踏まえると、「決定から営業開始まで半年」を確保しておくことが現実的な計画として安全とされています。プレスリリースや採用活動、日本側の社内承認スケジュールとの整合性を取るためにも、余裕を持ったタイムラインを設定することが重要です。
スケジュール遅延の主な原因
手続きが予定より遅延するケースで一般的に見られる原因として、①書類不備による補正要求の発生、②認証・翻訳の準備遅れ、③事務所所在地の変更(賃貸契約トラブルによる再申請)、④担当官庁での審査混雑(年末年始・旧正月テト前後)などが挙げられます。
特に書類の認証・翻訳は、日本側の準備が整わないと全体の進捗がストップします。親会社の代表取締役が変更になっている場合など、登記事項に変更が生じていると追加書類が必要になるケースもあります。早期の段階でチェックリストを使って書類の状態を確認することが、遅延リスクの軽減につながります。
よくある失敗パターンとVACANCE VIETNAMのアプローチ
ベトナムへの現地法人設立において、経験豊富な企業でも陥りやすい失敗パターンがあります。以下では、よく見られるリスクとその対処の方向性を解説します。なお、これらの課題は事前の準備と適切なパートナー選びで大幅にリスクを低減できると考えられています。
VACANCE VIETNAMのアプローチ
弊社では、進出前の段階から業種規制チェック・書類準備の段取り支援・現地ネットワークを活用した手続き伴走まで、一気通貫の支援体制を提供しています。以下のような失敗パターンを防ぐために、各フェーズで具体的なアドバイスと実務サポートを行っています。御社の状況に合わせた無料相談もご利用いただけます。
失敗パターン①:業種ライセンスの見落とし
最も多く見られる失敗の一つが、業種ライセンスの必要性を設立後に初めて認識するケースです。IRCとERCを取得した後、営業開始段階で「この事業には別途ライセンスが必要だった」と判明し、追加申請の時間とコストが発生するパターンです。小売業・飲食業・教育サービス・医療機器販売などはライセンスが必要な代表的な業種とされています。
対処策としては、進出前の段階で業種分類をベトナムの産業コード(VSIC)と照合し、追加ライセンスの要否を専門家と確認することが挙げられます。事業計画に複数の業種が含まれる場合は、それぞれについて確認することが重要です。
失敗パターン②:資本金の過少設定
設立コストを抑えようとして資本金を最低限に設定した結果、事業拡大時に増資手続きが必要になるケースがあります。増資にはIRCの変更申請が伴い、追加の時間とコストが発生します。また、業種によっては資本金の規模が取引先・顧客からの信用力評価に影響する場合もあります。
資本金は「法的最低額」だけで考えるのではなく、事業計画上の資金需要・業種規制・市場での信頼性という観点から総合的に設定することが望ましいとされています。
失敗パターン③:現地パートナー・代理人の選定ミス
手続きを依頼したコンサルタントや弁護士の実績・信頼性が不十分で、書類の誤りや進捗の不透明さが発生するケースも報告されています。特に、日本語対応を謳いながら実際の手続きの質に問題があるケースや、費用の追加請求が発生するケースが見られることがあります。
選定にあたっては、日系企業の同業種での設立実績・担当者との直接コミュニケーションの質・契約書の明確さを事前に確認することが重要です。VACANCE VIETNAMでは、現地の信頼できる専門家ネットワークを活用した手続きサポートを提供しており、透明性の高いプロセスで支援を行っています。
まとめと設立前チェックリスト
ベトナム現地法人の設立は、正しい手順と十分な準備があれば着実に進められるプロセスです。以下のチェックリストを設立前の確認に活用してください。
- ☑ 進出業種の外資規制・業種ライセンス要否を確認済みである
- ☑ 法人形態(LLC or JSC)を事業計画に基づいて選択済みである
- ☑ 資本金額を法的要件・事業資金需要・信用力の観点から設定済みである
- ☑ 事務所所在地の賃貸借契約(予約書含む)が準備できている
- ☑ 日本側書類(定款・登記簿等)の認証・翻訳スケジュールを確認済みである
- ☑ IRC・ERC申請から営業開始まで最低3〜4ヶ月のスケジュールを確保済みである
- ☑ 信頼できる現地専門家(コンサルタント・弁護士)の選定が完了している
- ☑ 税務登録・社会保険登録・外国人ワークパーミットの手続き計画がある
- ☑ 設立後の月次運営コスト(税務申告・賃料・人件費等)を試算済みである
ベトナム進出の全体像を把握した上で、各手続きを確実に進めることが成功への近道です。VACANCE VIETNAMでは、初回の無料進出診断・相談を通じて、御社の業種・規模・スケジュールに合わせた具体的なアドバイスを提供しています。現地法人設立の検討初期段階から伴走支援が可能ですので、ぜひご活用ください。
最終更新日:2026年6月