ベトナム進出に必要な許認可と手続き|業種別チェックリスト - VACANCE VIETNAM

ベトナム進出に必要な許認可と手続き|業種別チェックリスト

海外拠点の設立を検討する際、多くの企業が直面するのが「何を・どの順番で・どこに申請するのか」という手続きの全体像が見えにくいという課題です。とくに法令体系が日本と異なる国では、必要な許認可を見落としたまま事業を開始し、後から追加対応を迫られるケースが少なくありません。

本記事では、ベトナムへの進出に際して必要となる投資登録証明書(IRC)・企業登録証明書(ERC)の取得プロセスから、業種ごとに異なる追加許認可の種類、申請時の注意点まで、実務的な視点で体系的に解説します。2026年時点の最新制度をもとに、進出準備の全体像を整理するチェックリストも提供していますので、社内の確認・検討資料としてご活用ください。

こんな方にオススメ

  • ベトナムへの初進出を検討しており、必要な手続きの全体像をつかみたい方
  • 業種によって必要な許認可が異なることは知っているが、自社に何が必要か整理できていない方
  • 現地の手続きを自社で進めようとしたが、申請書類や期間の見通しが立たずに困っている方

この記事を読むと···

  • IRC・ERCの概要と取得の流れが理解できる
  • 製造業・小売業・サービス業など業種別に必要な追加許認可が把握できる
  • 申請時の落とし穴と、事前に回避するためのポイントがわかる

※ 本記事は2026年6月時点の情報をもとに執筆しています。法令・規制は随時改定されるため、最新情報は必ず専門家またはVACANCE VIETNAMにご確認ください。

ベトナム投資規制の基本構造:IRCとERCを理解する

ベトナム投資規制の基本構造:IRCとERCを理解する 1 IRC(投資登録証明書)とは 2 ERC(企業登録証明書)とは 3 IRC・ERC取得後の設立後手続

ベトナムで外資系企業が事業を行うには、日本の設立登記に相当する手続きが「2段階」に分かれている点を最初に理解しておく必要があります。日本では法務局への登記1件で法人が成立しますが、ベトナムでは投資プロジェクトの認可企業体の登録が制度上区別されており、それぞれ別々の証明書が発行されます。

IRC(投資登録証明書)とは

IRC(Investment Registration Certificate)は、外国投資家がベトナムで事業プロジェクトを実施することを政府が認可したことを示す証明書です。申請先は各省・市の計画投資局(DPI:Department of Planning and Investment)であり、設立予定地の属する省・市のDPIに提出します。

記載事項はプロジェクト名称・投資額・事業目的・投資家情報・事業実施期間などで、これが以後のすべての許認可手続きの「起点」となります。IRCに記載された事業目的(業種コード)の範囲を超えた活動は原則として認められないため、事業計画の射程を広めに記載しておくことが実務上重要とされています。

一般的な審査期間は15営業日とされていますが、条件付き業種(後述)や特定区域への投資の場合は追加の承認手続きが生じるため、1〜3か月程度を見込んでおく必要があります。なお、工業団地・輸出加工区・経済特区内へ設立する場合はDPIではなく各管理委員会(BQL)が窓口となります。

ERC(企業登録証明書)とは

ERC(Enterprise Registration Certificate)は、IRCの取得後に申請する「法人格の付与」に相当する証明書です。日本でいう登記簿謄本に近い位置づけで、法人名・設立地・法定代表者・資本金・出資者情報などが記載されます。

ERCの申請は原則としてIRC取得後に行いますが、DPIが一連の手続きとして処理するため、実務上はIRC・ERC申請書類を同時に準備してまとめて提出するケースがほとんどです。ERC発行をもって法人設立が完了し、銀行口座の開設・社会保険登録・税務登録などの後続手続きへ移行します。

ERCに記載された法定代表者(Legal Representative)はベトナム在住者が望ましいとされる場合があるほか、一部の業種では居住要件が規定されています。法定代表者の選定は後から変更できますが、変更手続きにも時間を要するため、慎重に決定しておくことが重要です。

IRC・ERC取得後の設立後手続き

IRC・ERCの取得だけでは事業を開始できるわけではありません。実務上、以下の後続手続きが必要とされる場合があります。

  • 税務登録・税コード取得(IRCまたはERC番号が税コードを兼ねるケースが多い)
  • 法定資本金の送金と資本金入金証明(IRC記載の送金期限内に完了が必要)
  • 労働関連登録(労働許可証・就業規則の届出など)
  • 社会保険・健康保険・失業保険への加入手続き
  • 会計帳簿・会計ソフトの登録(電子請求書制度への対応を含む)
  • 業種別の追加許認可(次章参照)

業種別・必要な追加許認可一覧

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ベトナムの投資法では、外国投資家に対して「条件付き投資業種(Conditional Business Lines)」が定められており、IRC・ERC取得後に別途、所管省庁への申請が必要となります。2026年時点では数百種類の条件付き業種が存在するとされており、自社の事業が該当するか否かの確認が進出準備の最重要ステップのひとつです。

以下は代表的な業種と必要な追加許認可の概要をまとめた一覧です。個別の要件は省令・通達レベルで細かく規定されており、業種・投資規模・設立エリアによって内容が異なる場合があります。

業種区分 主な追加許認可 主管省庁・機関 目安取得期間
製造業(一般) 環境影響評価(EIA)報告書承認、消防安全検査証明 天然資源環境省(MONRE)、公安省 3〜6か月
食品製造・加工 食品安全衛生許可、GMP認証(取扱品目による) 保健省(MOH)、農業農村開発省(MARD) 3〜9か月
小売業(店舗販売) 小売ライセンス、2店舗目以降はENT審査(経済的需要審査) 商工省(MOIT)、省・市の商工局 2〜4か月(ENT含む場合は6か月以上)
飲食業(レストラン等) 食品衛生安全許可、消防許可、酒類販売許可(取扱う場合) 省・市の保健局、公安局 2〜3か月
建設業 建設業ライセンス(工事分類別)、外国建設業者登録 建設省(MOC)または省・市建設局 2〜4か月
教育・研修 教育施設設立許可、教育活動許可 教育訓練省(MOET)または省・市教育局 3〜6か月
医療・クリニック 医療施設開設許可、医師・医療従事者の資格認定 保健省(MOH)または省・市保健局 4〜12か月
人材紹介・派遣 労働供給サービスライセンス、デポジット(保証金)の預託 労働傷病兵社会省(MOLISA)または省・市労働局 2〜3か月
物流・倉庫・通関 物流サービスライセンス、通関業者登録(代行の場合) 商工省(MOIT)、財務省(MOF) 2〜4か月

※ 上記の期間・要件は一般的な目安であり、個別案件の規模・設立地・投資形態により異なります。最新の法令要件は必ず専門家に確認してください。

VACANCE VIETNAMでは、御社の事業計画をもとにIRCに記載すべき業種コードの選定から、追加許認可が必要な業種の判定・申請代行まで一貫して支援しています。特に「条件付き業種」の判定は専門的な知識を要するため、事業開始前の早期段階でのご相談をお勧めします。

手続きの全体フローと標準的な期間

手続きの全体フローと標準的な期間 1 フェーズ1:事前準備で決めるべき重 要事項 2 フェーズ2・3:IRC・ERC申請 と設立後手続き 3 フェーズ4:業種別許認可の並行進行

ベトナムへの外資法人設立は、準備から事業開始まで一般的に6か月〜12か月程度を要するとされています。業種・設立地・投資形態(独資か合弁か)によって大きく変わりますが、典型的なフローは以下のとおりです。

フェーズ1:事前準備で決めるべき重要事項

IRCの申請前に、ベトナム当局が審査する際の判断材料となる事業計画書を日本語・ベトナム語(または英語)で整備しておく必要があります。特に業種コード(Vietnamese Standard Industrial Classification:VSIC)の選定は、その後の許認可取得要件に直結するため、事前に十分な検討が必要です。

業種コードが過度に狭いと、将来的な事業拡大の際に定款変更・IRC変更が必要になります。一方、実態と乖離した業種コードを記載すると許認可審査で問題になる場合があります。事業の中核と将来的な展開可能性を踏まえた上で、適切な業種コードを複数列挙しておくことが望ましいとされています。

また、設立エリアの選定も重要です。工業団地・輸出加工区は法人税優遇・インフラ整備済みというメリットがある反面、操業できる業種に制約がある場合があります。ハノイ・ホーチミンなどの都市部に設立する場合と工業団地への設立では、窓口となる機関も申請書類の要件も異なります。

フェーズ2・3:IRC・ERC申請と設立後手続き

IRCの申請に必要な書類は一般的に次のものが含まれますが、投資プロジェクトの種類・規模によって異なります。

  • 投資登録申請書(所定様式)
  • 投資家の身分証明書類(法人の場合:登記簿謄本・定款・財務諸表等)
  • 事業計画書(ベトナム語)
  • オフィス・工場の使用権を証明する書類(賃貸借契約書等)
  • 法定代表者の身分証明書(パスポート等)

ERC申請で必要な書類はIRC取得後に準備しますが、主なものとして会社設立申請書・定款・初代役員リスト・法定代表者任命書などが含まれます。定款はベトナム企業法の要件を満たす形式で作成する必要があり、日本企業が日本の定款をそのまま流用することはできません。

フェーズ4:業種別許認可の並行進行

IRC・ERC取得後に必要となる追加許認可は、申請先・期間がそれぞれ異なります。複数の許認可が必要な業種では、取得順序に依存関係がある場合があるため(例:EIA承認が建設許可の前提条件になる等)、ロードマップを事前に作成した上で並行進行できる手続きを整理しておくことが重要です。

VACANCE VIETNAMでは、業種別許認可の取得ロードマップ作成から、各申請書類の作成・提出代行・現地当局との折衝まで、一連のプロセスを現地ネットワークを活かして支援しています。特に「並行進行できる手続きの最適化」は、事業開始時期を数か月早めることにつながる場合があり、実務上の重要度が高いステップです。

申請時の注意点・よくある落とし穴

申請時の注意点・よくある落とし穴 1 落とし穴①:業種コードの設定が狭 すぎる 2 落とし穴②:資本金の送金期限・証 明書類の不備 3 落とし穴③:ENT審査(小売業) の負荷を過小評価する 4 落とし穴④:労働許可証(Work Permit)の見落とし

手続きの概要を把握した上で見落としがちなのが、申請プロセスにおける「落とし穴」です。ベトナムへの進出を果たした企業が事後的に追加対応を余儀なくされた事例の多くに、以下のような共通するパターンが見られます。

落とし穴①:業種コードの設定が狭すぎる

IRCに記載する業種コードは、あくまで「その時点での事業計画」を反映したものとなりがちです。しかし事業が軌道に乗った後、取扱商品の追加・サービスラインの拡張・販売方法の変更などを行う際に、業種コードを追加・変更するためのIRC変更手続きが必要になります。

この変更手続きは数週間〜数か月を要するとされており、その間は対象の業種・商品での営業ができない場合があります。設立時に将来的な事業拡張を見越して業種コードを登録しておくことが実務上の定石とされており、専門家との事前の検討が欠かせません。

落とし穴②:資本金の送金期限・証明書類の不備

IRCには「法定資本金の送金期限」が記載されており、一般的には法人設立から90日以内に資本金を送金することが義務付けられています(投資法・企業法の規定による)。この期限内に送金できない場合、当局からの指摘・是正要求につながる場合があり、送金の遅延は慎重に管理する必要があります。

また、送金後は指定の直接投資資本口座(DICA)を通じた入金が原則とされており、通常の外貨口座への入金では資本金とみなされない場合があります。銀行口座の開設と口座種別の確認を早期に行い、送金手順を事前に取り決めておくことが重要です。

落とし穴③:ENT審査(小売業)の負荷を過小評価する

小売業で2店舗目以降を出店する場合、ENT(Economic Needs Test:経済的需要審査)と呼ばれる審査を通過する必要があります。この審査では、進出先エリアにおける市場の需要・既存店舗の状況・消費者へのメリットなどを立証する書類の提出が求められ、審査期間は6か月以上かかるケースも珍しくないとされています。

EC(電子商取引)専業の場合はENT非適用とされる場合があるなど、販売チャネル・店舗形態によって要件が異なるため、小売業での進出を検討する際は業態設計の段階から許認可要件を考慮に入れることが必要です。

落とし穴④:労働許可証(Work Permit)の見落とし

日本から役員・従業員をベトナムに派遣・赴任させる際、一定の要件を満たさない場合は労働許可証(Work Permit)の取得が必要となります。一般的に、外国人労働者は原則として就労前に労働許可証を取得する必要があり、取得には学歴・職歴・専門資格の証明書類が必要です。

法定代表者など特定の役職については免除規定がある場合もありますが、要件は定期的に改正されることがあるため、赴任予定者の職位・担当業務ごとに個別に確認することが推奨されます。労働許可証なしでの就労は法令違反となり、処罰の対象となる場合があります。

業種別・進出準備チェックリスト

以下は進出準備の段階別チェックリストです。業種に応じて該当項目をご確認ください。「×」がついている項目が残っている段階では事業開始ができない場合があるため、各フェーズの完了状況を社内で定期的に確認することをお勧めします。

フェーズ チェック項目 対象
事前準備 □ 事業計画書(ベトナム語版)を作成した 全業種
□ IRCに記載する業種コード(VSIC)を確定した 全業種
□ 投資先エリア(工業団地・都市部等)を選定した 全業種
□ 合弁の場合は現地パートナーを選定し、基本合意書を締結した 合弁のみ
□ 条件付き業種の該当有無を確認した 全業種
IRC・ERC申請 □ 投資登録申請書類一式を作成・提出した 全業種
□ IRC(投資登録証明書)を取得した 全業種
□ ERC(企業登録証明書)を取得した 全業種
□ 定款をベトナム企業法に準拠した形式で作成した 全業種
設立後手続き □ 直接投資資本口座(DICA)を開設した 全業種
□ IRC記載の期限内に法定資本金を送金した 全業種
□ 税務登録・電子請求書の設定を完了した 全業種
□ 赴任予定の外国人従業員の労働許可証申請を行った 外国人赴任ありの場合
□ 社会保険・健康保険・失業保険の登録を完了した 全業種
業種別許認可 □ 環境影響評価(EIA)承認を取得した(製造業等) 製造業・一定規模以上
□ 小売ライセンス・ENT審査を完了した(小売業) 小売業
□ 食品衛生安全許可を取得した(飲食・食品製造) 飲食・食品製造
□ 消防安全検査証明を取得した(施設を構える場合) 施設・倉庫設置の場合

まとめ:許認可対応を成功させるポイント

ベトナム進出に必要な許認可・手続きは、IRC・ERCという基本的な2段階に加え、業種によって大きく異なる追加許認可が存在します。これらを漏れなく把握し、スケジュールに組み込むことが、事業開始の遅延を防ぐ最大のポイントです。

本記事の内容を整理すると、進出準備で特に重視すべきポイントは以下の3点です。

業種コードの設計 IRCに記載する業種コードは「現在の計画」だけでなく「将来の事業展開」を見越して設定する
許認可ロードマップの早期作成 追加許認可の取得期間・依存関係を把握し、並行進行できる手続きを最大化する
資本金管理・口座種別の確認 DICAの開設と送金期限の管理を初期から正確に行う

VACANCE VIETNAMは、ベトナム専門の戦略コンサルティングとして、法人設立に係る許認可取得の全工程を支援しています。現地ネットワークと実務経験を活かした業種別許認可ロードマップの作成から申請書類の整備・当局対応まで、一貫してサポートします。「まず自社の業種に何が必要かを確認したい」という段階でも、無料の進出診断を通じて具体的な手続き要件をお伝えしています。

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よくある質問

Q. IRCとERCは同時に申請できますか?
A. 制度上はIRC取得後にERC申請を行う順序となっていますが、実務上は同じDPI窓口で一連の手続きとして進行させるケースが多く、書類を同時に準備することは可能です。ただし申請受理の順序はIRC→ERCの順となります。具体的な進め方は設立予定地のDPIまたは専門家にご確認ください。
Q. 条件付き投資業種かどうかは、どこで確認できますか?
A. ベトナム投資法(2020年)の付属リストおよびその後の改正通達に、条件付き投資業種の一覧が掲載されています。ただしリストは定期的に改訂されるため、2026年時点の最新版を確認することが重要です。VSICコードとの対応確認が必要なケースも多く、専門家への確認を推奨します。
Q. 工業団地に設立する場合、都市部とどのような違いがありますか?
A. 工業団地・輸出加工区・経済特区内への設立では、申請窓口がDPIではなく各管理委員会(BQL)となる点が大きな違いです。また、法人税の優遇措置(税率・免税期間)が適用される場合がある一方、事務所・店舗型サービス業など特定業種は操業できない区域もあります。設立地の選定は事業業態と税務・許認可の両面から検討することが必要です。
Q. 外国人役員がベトナムに常駐しない場合、手続きに影響はありますか?
A. 法定代表者については、業種・設立形態によりベトナム居住が求められる場合があります。非居住の法定代表者を設置する場合は、現地在住の委任代理人(Authorized Representative)を設置することで対応できるケースがありますが、要件は業種・投資形態により異なります。また、法定代表者の不在期間が長い場合には書面による権限委任が必要となる場合があるため、事前の確認が必要です。
Q. 資本金額はどう決めればよいですか?最低額の定めはありますか?
A. 業種によっては法令で最低資本金額が定められている場合があります(例:証券業・銀行業・保険業等は多額の最低資本金が規定)。それ以外の業種では法定最低資本金はないとされていますが、IRCに記載した資本金額が事業規模・許認可審査の際の信頼性判断に影響する場合があります。また、小さすぎる資本金は後の事業拡大時の増資手続きを要するため、中長期的な資金計画に基づいた設定が推奨されます。

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