ベトナムで会社設立の費用はどのくらい?費用の全体項目や相場について解説します。
ベトナムで会社をつくりたいけれど、どれくらいお金がかかるのか不安……。本記事では、設立時の費用の内訳から、コストを抑える準備のコツなど、初めての方でもわかりやすいようご紹介します。
目次
ベトナム会社設立にかかる主な費用項目とは
会社を設立する際には、さまざまな費用が発生します。ここでは、ベトナムで法人を立ち上げる際に必要となる主な費用について順に見ていきましょう。
基本的な初期費用
はじめに必要となるのは、法人設立そのものにかかる基本的な費用です。具体的には、以下のような項目が含まれます。
・企業登録証(ERC)および投資登録証(IRC)の取得費用
・印紙代や公証費
・法人口座開設に伴う銀行手数料
・登記用オフィス住所の確保費用(バーチャルオフィスを含む)
行政手続きにかかる費用と相場
会社を正式に登録するまで、いくつかの行政手続きがあります。それに伴い申請書類の作成、公証、税務登録などに伴う手数料が発生します。
例えば、投資登録証(IRC)と企業登録証(ERC)の発行にかかる官公庁への手数料は、通常で数千円〜数万円程度です。ただし、書類作成や申請代行を専門家に依頼する場合には、別途費用が発生します。
さらに、会社設立後には事業登録税(ライセンス税)も納付する必要があります。資本金が10億ドン(約6,000万円)以下であれば200万ドン(約12,000円)、それを超える場合は300万ドン(約18,000円)が課税されます。
事業内容によって異なる法定資本金の目安
ベトナムでは、会社設立に際して必要とされる資本金の額は、事業の種類によって異なります。多くの業種では、明確な下限が法律で定められていないものの、事業の実行可能性を示す水準が求められることが一般的です。
一方で、特定の業種においては、政府によって最低資本金の基準が設けられています。代表的な例は、次のとおりです。
- 銀行業(商業銀行):最低資本金は3,000億ドン(約18億円)とされており、外資100%による新設は認められていません。設立には、ベトナム企業との合弁などの形態が前提となります。
- 不動産事業:2023年に改正された不動産業法により、固定額の最低資本金制度は廃止されています。現在は、プロジェクトの規模に応じた自己資本比率が基準とされており、土地面積が20ヘクタール未満の開発では20%以上、20ヘクタール以上では15%以上の自己資本が必要です。
このように、業種ごとに設立要件や資本金の水準は異なります。事前に、所管官庁や最新の法令を確認しておくと安心です。
労働許可証・ビザ関連の取得費用
ベトナムで外国人が働くには労働許可証が必要です。発行手数料は地域によって違いがありますが、主な都市では以下が一般的です。
新規発行:60万ドン(約3,600円)
再発行・延長:45万ドン(約2,700円)
加えて、代行会社を通じて申請を行う場合は、9万円前後の費用が発生します。なお、労働許可証と併せて、ビジネスビザや居住登録も必要となる場合があります。これらの費用も都市や状況によって変動します。
会社設立代行会社に依頼した場合のコスト
設立手続きに不安がある場合は、専門の代行業者を利用する選択肢もあります。日本語対応のあるベトナム現地法人に依頼するケースが多く、サービス内容によって価格に幅があります。
一般的には、設立から営業開始までをサポートするパッケージで、1億2,500万〜2億ドン(約70万〜120万円)程度が相場です。これには、書類作成、通訳対応、現地調査の手配などが含まれる場合もあります。料金体系やサポート範囲は業者ごとに異なるため、契約前に詳細を確認しておくことが望ましいです。
外国人出資の場合にかかる追加費用と注意点
外国人がベトナムで会社を設立する場合には、現地企業と比べて手続きや費用に追加項目が出てきます。ここでは特に気をつけたいポイントを優しくお伝えします。
外国人出資で増える手続き
外国人が出資する場合、ベトナム政府から「外国投資」とみなされます。そのため、企業登録証(ERC)に加えて、投資登録証(IRC)の取得が必要になります。
これらの取得には、現地法人のみの設立と比べて1〜2ヶ月程度の期間と、別途費用がかかるとされています。とくにライセンス審査や官公庁とのやりとりが煩雑になる傾向があり、設立全体のスケジュールにも影響を及ぼします。
日本人代表者がいる場合の証明書類
代表者として日本人が登記される場合には、各種の証明書類を用意する必要があります。主に求められるのは、パスポートのコピー、公証済みの戸籍抄本、住所証明、銀行の残高証明などです。
これらの書類は、日本国内で取得後に翻訳と公証が求められるため、取得から手続き完了までに数週間を要する場合があります。加えて、翻訳書類には在日ベトナム大使館などの領事認証を受ける必要もあるため、余裕を持って進めたいところです。
出資者の国籍によって変動するコスト
出資者が外国籍の場合、いくつかの点でコストが変動します。たとえば、ベトナムでは多くの業種に最低資本金が設定されていませんが、外国出資が含まれる場合は、業種に応じて一定の資本金基準が求められることがあります。実際に、一般的なコンサルティング業であっても、約5億100万ドン(約300万円)の資本金を求められるケースが報告されています。
また、会社設立後は資本金を法人口座に90日以内に払い込む必要があり、その際に発生する送金手数料や為替手数料も想定しておくことが望ましいです。さらに、資本金額に応じたライセンス税が発生します。おおむね、資本金が一千億ドン以下であれば年間2百万ドン(約12,000円)、それを超える場合は3百万ドン(約18,000円)とされています。
オフィスや工場の賃貸・開設に関わる費用の相場
オフィスあるいは工場を設ける際には、賃貸料金に加えて設備整備の費用が必要です。ここでは目安となる金額や、比較のための情報をお伝えします。
ホーチミン・ハノイ中心地のオフィス賃料の目安
ベトナムの主要都市であるホーチミン市やハノイでは、経済成長にともないオフィススペースの需要が高まっており、賃料も上昇傾向にあります。グレード別に、賃料の目安や特徴をご紹介します。
グレードAオフィス
金融機関や商業施設へのアクセスが良く、防災・セキュリティなどの設備も国際基準を満たす高品質な物件です。中心地のAグレードオフィスでは、賃料は1平方メートルあたり月額75万〜91万ドン(約4,500〜5,500円)程度が相場です。
グレードBオフィス
やや築年数が経過しているか、中心部から少し離れた立地にある中級クラスのオフィスです。設備やサービスはAグレードより簡素で、賃料は1平方メートルあたり月額50万〜67万ドン(約3,000〜4,000円)程度となっています。
グレードCオフィス
急成長中の郊外エリアに多く見られ、基本的な設備のみが整ったシンプルなオフィス物件です。賃料は1平方メートルあたり月額33万〜50万ドン(約2,000〜3,000円)程度が目安です。
コワーキングスペース
個人事業主やスタートアップ企業に人気のコワーキングスペースでは、高速Wi-Fiや会議室、プリンターなどが完備されています。料金は、1日利用で15万〜20万ドン(約900〜1,200円)、1年契約の場合は月額200万ドン(約12,000円)前後が一般的です。
レンタル工場・自社工場のコスト比較
ベトナムで製造拠点の立ち上げを検討する際には、レンタル工場の利用か自社工場の建設かによって、初期費用や事業開始までのスケジュールに違いが生じます。一般的に、レンタル工場の月額賃料は、1平方メートルあたり約3万ドン〜20万ドン(約180〜1,170円)が目安とされており、平均では約9万ドン(約580円)程度です。賃料は、地域、建物の状態、契約条件によって異なります。
一方、自社工場を建設する場合の具体的なコストについては、日本語での公的資料では明確に示されていませんが、ベトナム国内の建設業者が提示する相場として、1平方メートルあたり約501万ドン~1,503万ドン(約30,000円~90,000円)程度という情報もあります。ただし、これは工場の規模や仕様、設備内容によって大きく変動します。そのため、初期費用を抑えつつ早期に事業を始めたい場合には、設備が整ったレンタル工場を選択することで、準備期間とコストの負担を軽減できるといえるでしょう。
共有設備・事務機器など初期投資の内訳
オフィスや工場を開設する際には、家賃や施設費だけでなく、光熱費や通信設備、駐車場などの初期投資も必要です。
電気・空調設備費用
オフィス内でエアコンを使うと、月々の電気代が300万〜800万ドン(約18,000〜48,000円)になることがあります。事前に電力会社や管理会社に見積もりを依頼されるとよいでしょう。
インターネット回線費用
標準的なオフィス用インターネット回線は、月約20万〜30万ドン(2,000〜3,000円)が目安です。
駐車場利用料
バイク駐車場は月約30万ドンが相場です。自動車ではエリアによって異なるため、現地価格を確認されることをおすすめします。
このように、賃貸以外にも光熱費や回線費、駐車場代などがかかります。
設立後に必要となる維持費・ランニングコスト

会社を設立した後も、さまざまな維持費や税金、従業員関連費用が継続的に発生します。ここでは、主な費用項目をわかりやすく整理します。
毎年発生する事業登録税・監査・会計費用
ベトナムで会社を設立した後には、毎年いくつかの維持費用がかかります。まず、事業登録税(年次ライセンス税)は資本金に応じて課されます。
次に、外資系企業には年に一度、法定会計監査が義務付けられており、監査済み財務諸表の提出が必要です。監査費用は企業の規模や業務量によって変動し、公的には金額が定められていませんが、実務上は約2,000万〜2,500万ドン(約120,000〜150,000円)程度が目安となるケースもあります。さらに、月次/四半期単位の会計・税務申告では、外部専門家への依頼によるサポート費用が発生します。
駐在員の生活費用・交通費・ビザ更新費用
駐在員を雇用する際には、以下のようなコストが発生します。
生活費の目安
単身駐在員の生活費(家賃・光熱費・通信費・交通費を含む)は、現地の日本人向けモデルケースで月1,000万ドン~2,500万ドン(約60,000~150,000円)程度とされています。
通勤交通費
バイクでの交通費は、約50万ドンです。
ビザ・労働許可証関連手数料
商用ビザや一時在留カード取得または更新には、公的費用として1件あたり60万ドン~400万ドン(約3,000~24,000円)程度が必要です(商用ビザ:25~50USD/1か月、一時在留カード360万~410万ドン(約21,500~24,500円)程度)。業務代行や渡航費を加えた場合は、総額で数百ドル規模になる可能性があります。
社用車やタクシー利用
業務上で社用車やタクシーを活用する場合、その利用頻度や距離に応じて別途費用がかかります。
従業員給与・社会保険・昇給や賞与の目安
ベトナムでは、最低賃金が地域別に法令で定められています(2024年7月時点)。
- 地域Ⅰ(ホーチミン・ハノイ):500万ドン(約30,000円)/月
- 地域Ⅱ:440万ドン(約26,000円)/月
- 地域Ⅲ:390万ドン(約23,000円)/月
- 地域Ⅳ:350万ドン(約21,000円)/月
雇用主が負担する法定保険料は給与に対して約21.5%、従業員負担は約10.5%です。内訳は以下になります。
- 社会保険:雇用主17.5%/従業員8%
- 健康保険:雇用主3%/従業員1.5%
- 失業保険:雇用主1%/従業員1%(外国人従業員には適用されない場合あり)
昇給制度やテトボーナスの支給は、企業ごとに異なるため、制度導入の際には各社の社内規定を確認されると安心できます。
法人税や付加価値税などの税金と優遇措置
ベトナムで法人を設立・運営する際には、複数の税制度に対応する必要があります。法人税や付加価値税(VAT)は基本的な納税義務であり、事業の内容や所在地によっては優遇措置が適用される場合もあります。
法人税と優遇措置
ベトナムの法人税の標準税率は20%です。ただし、一定の業種や地域、特定の経済特区に投資する企業に対しては、10%や15%の優遇税率が数年間適用されることがあります。また、初年度から一定期間の免税・減税制度も設けられており、進出時には条件の確認が重要です。
付加価値税(VAT)
標準的なVAT税率は10%ですが、生活必需品など一部の対象品目には5%の軽減税率が適用されます。さらに、輸出関連取引などに対しては0%の免税措置もあります。VATの申告は、年間売上高に応じて月次または四半期ごとに行う必要があります。
外国契約者税(FCT)
外国企業がベトナム国内の企業と契約し、サービス提供やライセンス供与などを行う場合には、外国契約者税(FCT)が課されることがあります。この税金は、付加価値税と法人税の合算で構成され、契約内容により2〜10%程度の源泉徴収が行われます。
業種別で変わる設立条件と必要費用
ベトナムでは、業種によって会社設立に必要な条件や費用が異なります。ここでは、代表的な三つの業種を取り上げて、設立にかかる費用や注意点をご紹介します。
製造業
製造業でのベトナム進出を検討する際には、工場用地の確保方法として「レンタル工場の利用」と「自社工場の建設」の2つの選択肢があります。レンタル工場は、工業団地内における賃料の相場が1平方メートルあたり月額100万ドン~180万ドン(約600円~1,050円)(管理費込み)とされており、比較的短期間で事業を開始できる点が特長です。
一方で、自社工場の建設については、公的資料に明確な㎡単価の記載はなく、建物の仕様や設備内容によって費用が大きく変動するため、現地業者による個別の見積もりが必要です。また、製造業を営むには、環境影響評価(EIA)や消防許可などの法定手続きが求められます。多くの工業団地では、こうした手続きに関するサポート体制が整っており、申請準備も比較的スムーズに行えるケースが多いとされています。
飲食業
飲食業では、開業に際して店舗賃貸料や内装、厨房設備などの初期投資が必要です。賃料については、立地や店舗規模により大きく異なるため、現地不動産や専門家への確認が望ましいです。
また、食品を扱うには保健局による「食品安全衛生証明書」の取得や、一定規模以上の店舗で「環境保護計画登録」も求められます。加えて、消防許可などの行政手続きが所管機関で必要となることから、都市の人民委員会や工業団地運営者を通じた確認が有効です。
サービス業
サービス業(たとえばコンサルティング業や人材紹介業など)の場合、他の業種に比べて設備投資は少なく済む傾向があります。ただし、業種によっては最低資本金の基準が定められていることがあります。
たとえば、人材紹介サービスを行う場合、ベトナム政府は3億ドン(約180万円)の保証金の預託を義務づけています。また、外国人が関与する場合には、事業の安定性を示すために2万ドル前後の資本金が一般的に求められます。サービス業でも、国家によるライセンスが必要とされる業種があります。とくに教育や医療などの分野では、申請書類や担当者の資格に関する基準が厳しく定められているため、事前の調査が欠かせません。
ベトナム進出を成功させるための注意点
ベトナムでの事業展開を順調に進めるには、法制度や文化的背景への理解が欠かせません。ここでは、現地での活動をスムーズに行うための注意点をご紹介します。
法律・規制の変化に対応するための情報収集
ベトナムでは、企業に関する法律や規制が頻繁に見直されます。とくに外国企業向けの制度は、投資環境の変化に応じて細かく更新される傾向にあります。
正確な情報を得るには、JETROや在ベトナム日本商工会(JCCI)などの公的機関の情報を定期的に確認することが有効です。また、現地の行政手続きを熟知した専門家や代行会社と連携することで、実務上の変更点にも柔軟に対応しやすくなります。
文化・商習慣を理解したマネジメント
ベトナムと日本では、働き方やコミュニケーションの価値観に違いがあります。たとえば、年齢や立場を重んじる傾向が強く、上下関係や呼び方にも注意が必要です。また、口頭での指示が重視されることもあるため、相手に伝わる表現を意識することが大切です。文化の違いに戸惑うこともありますが、現地スタッフとの信頼関係を築くことが、事業の安定につながります。
信頼できる専門家との連携
進出初期の段階では、すべてを自社だけで進めることは難しい場合もあります。設立手続き、法務、会計、労務など、分野ごとに信頼できる現地の専門家と連携することが重要です。
専門家の知見を取り入れることで、制度や商習慣の違いによるリスクを減らすことができます。また、言語面の壁をカバーしてもらえることで、現地当局とのやり取りも円滑になります。
まとめ
ベトナムでの会社設立には、費用や手続き、法制度への理解など、準備すべきポイントが数多くあります。本記事でご紹介した内容が、あなたの事業スタートに少しでも役立てば幸いです。不安な点があれば、現地の専門家に相談するのもひとつの選択肢です。焦らず、確実に、一歩ずつ準備を進めていきましょう。
ベトナムにおける現地法人設立からマーケティング・営業活動に至るまで幅広くサポートしております。まずは、問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にご相談くださいませ。
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