ベトナム会社設立の必要書類は?法人登記の手続きの流れと準備一覧を解説します
ベトナムで会社を設立したいけれど、何を準備すれば良いのかわからない――そんな方のために、必要書類や手続きの流れをわかりやすくまとめました。法人登記に必要な2つの登録証明や日本での準備方法も丁寧にご紹介します。
目次
ベトナム会社設立に必要な2つの登録証明とは
ベトナムで会社を設立する際には、大きく分けて二つの証明書を取得する必要があります。それが「投資登録証明書(IRC)」と「企業登録証明書(ERC)」です。
ここでは、それぞれの証明書の役割や取得の順序、制度上のポイントをご紹介します。
投資登録証明書(IRC)
IRCは、「外国投資家による投資活動を登録するための公的証明書」として機能します。 この証明書を取得することで、ベトナムにおける投資案件の存在が正式に認められます。申請先は、進出予定地の計画投資局または工業団地等の管理委員会です。 必要書類には、投資申請書や出資者の決算書、賃貸契約書の写しなどが含まれます。
企業登録証明書(ERC)
IRCを取得したあとは、ERCの取得を通じて現地法人としての法人格を得ることになります。ERCは、いわば「会社の戸籍」にあたる登録証明書であり、発行後に法人コード(=税コード)が割り当てられます。
ERCは、企業の設立・組織構成・代表者情報などを正式に記載するもので、会社の定款や出資者リスト、代表者のパスポート写しなどが必要になります。企業登録申請は、進出地域の計画投資局・事業登録部に対して行われます。
IRCとERCの違い
IRCは「投資案件の登録」、ERCは「法人そのものの設立」に関する登録です。一般的には、まずIRCを取得し、その後ERCを申請するという二段階の流れが基本とされています。この流れは、投資法33条および企業法22条に基づいて定められており、いずれも正確な書類提出と適切な申請順序が求められます。それぞれの証明書には共通の書類も多く含まれるため、事前に整理しておくと混乱を防ぎやすくなります。
同時申請は可能?新制度の活用方法
通常、ベトナムでの会社設立手続きは、投資登録証明書(IRC)を取得した後に、企業登録証明書(ERC)を申請するという二段階で進められます。これは、投資法33条および企業法22条に基づいた一般的な運用です。一部の地域や案件の内容によっては、申請書類を一括で提出し、IRCとERCの審査を同時に進められる場合もあります。
同時申請が可能かどうかは、管轄の投資計画局(DPI)の裁量次第で、制度として明文化されているわけではありません。そのため、同時申請を希望する場合は、事前に設立予定地のDPIへ相談し、最新の運用状況を直接確認することが重要です。実務上の対応や書類の扱いには地域差があるため、標準的な二段階申請を基本としつつ、柔軟な対応が必要です。
IRC(投資登録証明書)申請に必要な書類
IRC(投資登録証明書)は、ベトナムでの法人設立における第一段階として必要となる重要な証明書です。
ここでは、申請時に提出が求められる書類の概要と、出資者の形態によって異なる必要書類、さらに翻訳や公証に関する手続きの流れをご紹介していきます。
提出書類一覧
IRC申請にあたり、基本的に提出が必要とされる主な書類は以下のとおりです。これらはすべて、進出予定地の計画投資局(DPI)や工業団地の管理委員会に提出することになります。
- 投資実施申請書
- 投資案件の提案書(事業内容・資本規模・投資形態などを記載)
- オフィスや工場に関する賃貸契約書
- 土地使用に関する提案書(必要な場合)
出資者の身分証明書または登記簿謄本の写し - 出資者の財務状況を示す書類(直近二期分の決算書または残高証明書)
出資者が法人である場合に必要な書類
出資者が法人である場合には、上記に加えて法人としての登録状況や経営内容を証明する次のような書類が必要となります。
- 出資会社の登記簿謄本の公証写し
- 出資会社の直近二期分の決算報告書(公証付き)または残高証明書
- 出資会社の代表者のパスポート写し
- 銀行からの資金支援証明書(任意の場合あり)
これらの書類は、日本で取得後、公証・認証・翻訳といった手続きを経る必要があります。提出先では、正確性と信頼性のある情報として扱われます。
個人が出資する場合に追加で求められる書類
出資者が個人の場合には、法人とは異なる書類が求められます。特に、資金力の裏付けとなる資料の提出が重要とされています。
- 投資家本人のパスポート写し(公証付き)
- 銀行発行の個人口座の残高証明書(投資予定額を上回る残高が必要)
ベトナム当局では、証明書内の残高が十分であるかどうかを確認したうえで審査が行われます。証明書には投資予定額との整合性が求められるため、申請前に確認しておくと安心です。
翻訳の認証・公証
日本国内で作成された文書をそのままベトナムで使用することはできません。申請前には、次の手続きが必要となります。
- 公証(日本の公証役場)
文書が偽造でないことを証明する手続きです。 - 公証人押印証明(法務局)
公証人の資格と押印の正当性を証明するためのものです。 - 外務省での公印確認
公文書として正式に国外で使用するための確認手続きです。 - 領事認証・翻訳公証(ベトナム大使館または領事館)
翻訳後の書類をベトナム語に訳し、公的に認証を受けます。
なお、東京都・神奈川県・大阪府の一部公証役場では、これらを一括して行える「ワンストップサービス」が提供されています。このサービスを利用することで、法務局や外務省への出向が不要となり、手続きの簡略化ができます。
ERC(企業登録証明書)取得に必要な書類
ERC(企業登録証明書)は、ベトナムにおいて法人格を得るために欠かせない証明書です。
ここでは、設立する会社の形態や出資者の違いによって異なる提出書類、補足的に求められることがある資料、申請から取得までの流れをご紹介します。
会社の種類別に異なる書類構成(有限会社・株式会社など)
会社の設立形態によって、ERC申請に必要な書類には違いがあります。以下に、代表的な会社形態ごとの提出書類をまとめました。
<有限責任会社(単独または複数社員)>
- 企業登録申請書
- 定款(出資者間の基本契約)
- 出資者一覧(氏名・住所・出資額を記載)
- 投資登録証明書(IRC)の写し
<株式会社(複数株主)>
- 企業登録申請書
- 定款
- 創立株主一覧および外国投資家の株主リスト
- 委任代表者の一覧
- 投資登録証明書(IRC)の写し
それぞれの会社形態に応じた必要書類の詳細は、企業法22条に規定されています。
法人出資と個人出資で異なる証明書類
ERC申請においては、出資者が個人か法人かによって提出すべき書類の内容が異なります。これは、出資元の信頼性や身元確認の方法が異なるためです。
<出資者が個人の場合>
- パスポートの公証写し
- 委任状(代表者を指定する場合)
<出資者が法人の場合>
- 登記簿謄本(現在事項全部証明書)の公証写し
- 委任代表者のパスポートの公証写し
- 委任状(署名権限の委任を明示)
また、法人出資の場合は、定款や代表者リストも正確に確認しておく必要があります。これらの情報はERCに記載されるため、内容に誤りがあると再申請が必要となるケースもあります。
委任状の補足資料
ERC申請では、申請形態によっては「委任状(Power of Attorney)」の提出が求められることがあります。たとえば、出資者と代表者が異なる場合などです。
また、地域によっては、代表者の滞在ビザ情報などの提示を求められるケースもあります。こうした追加書類の要否については、事前に申請先の投資計画局(DPI)や商工局に確認しておくことが重要です。
ERC取得までの標準スケジュールと注意点
ベトナム企業の設立には、投資登録証明書(IRC)取得と並行して、企業登録証明書(ERC)取得が必要です。以下は一般的な処理期間の目安です。
- 書類準備(日本での公証・認証・翻訳を含む)
実務上、一般的に3〜4週間程度見込めるのが適切ですが、公式の明記はありません。 - IRC取得(投資登録証明書)
- 通常案件:DPI申請後15営業日以内
- 工業団地等:5営業日以内の場合あり。実務では約3週間かかる例もあります。 - ERC取得(企業登録証明書)
申請後、3営業日以内が公式期限とされています。実務上は3〜5営業日が一般的です。 - 不備対応が必要な場合
DPIから追加資料が求められると、追加で1〜2週間程度かかるケースもあります(実務上の目安)。
書類準備と認証の流れ
ベトナムで会社を設立する際、日本で作成・取得した書類をそのまま提出することはできません。公的な効力を持たせるためには、段階的な認証と翻訳の手続きが必要です。
ここでは、それぞれの認証の意味と流れをご紹介します。
公証とは何か
まず最初に行うのが、公証役場での「公証」です。日本国内で作成されたパスポートの写しや残高証明書、登記簿謄本のコピーなどは、法律上「私文書」とされます。
こうした書類を正式な文書としてベトナム当局に提出するためには、「真正な写しであること」を公証人が確認し、公的な証明を与える必要があります。この段階では、原本との照合や書面の真正性を中心に確認が行われます。
公証人押印証明とは?
公証後の書類に対して、次に必要となるのが「公証人押印証明」です。これは、法務局が「その公証が正当に行われたものであること」を公式に証明する手続きです。
具体的には、法務局長が「その押印が在職中の公証人によって、正式な手続きに基づいて行われた」ことを確認し、証明書を発行します。これにより、文書が公証人個人による私的な押印ではなく、公的に認められた行為であることが明示されます。
押印証明の必要性と注意点
公証人押印証明は、次に外務省で行う「公印確認」や、在日ベトナム大使館での「領事認証」の前提となる書類です。この段階を省略してしまうと、後続の認証を受け付けてもらえないことがあります。
また、押印証明には一定の日数を要するため、申請時期に余裕を持つことが望ましいとされています。特に複数の書類を一括で申請する場合、証明漏れや記載誤りが起きやすいため、丁寧な確認作業が重要です。
領事認証・翻訳公証の流れと費用相場
外務省での「公印確認」が完了した後、最後に必要となるのが在日ベトナム大使館または領事館による「領事認証」です。これにより、日本国内で作成された文書が、正式にベトナムでも有効な公文書として認められます。
提出文書の翻訳と公証が必要なこともあります。ベトナム大使館の翻訳サービスは1枚あたり約5,000円のため、書類が多いと費用がかさみます。外部の翻訳業者を活用する場合もありますが、その場合は翻訳内容について大使館の公証を改めて受ける必要があります。
公証のワンストップサービス対応エリア(東京・神奈川・大阪)
手続きの簡素化を図るため、一部の公証役場では「ワンストップサービス」が導入されています。このサービスを利用すると、公証・法務局の押印証明・外務省の公印確認の三段階をすべて公証役場のみで完了させることが可能です。対応している主なエリアは、以下の三都府県に限られます。
- 東京都(例:東京公証人合同役場)
- 神奈川県(例:横浜公証センター)
- 大阪府(例:大阪合同公証役場)
このサービスを利用すれば、物理的な移動や郵送による手続きが省略され、時間と手間の大幅な節約につながります。ただし、事前予約や対応文書の制限がある場合があるため、各公証役場に直接確認することが大切です。
ベトナムでの書類提出先と担当機関
日本での認証や翻訳が完了した書類は、いよいよベトナム国内での申請に使用されます。ここでは、書類の提出先となる主要機関や、その役割についてご紹介します。
計画投資局(DPI)
会社設立に関するほとんどの手続きは、各省・市に設置されている計画投資局(Department of Planning and Investment:DPI)が担当しています。この機関は、主に以下のような役割を担っています。
- 投資登録証明書(IRC)の受理・審査・発給
- 企業登録証明書(ERC)の受理・審査・発給
- 投資家や法人に対する制度的な案内および登録指導
申請先は、法人設立予定地のDPIに限られます。たとえば、ホーチミン市に設立する場合は「ホーチミン市計画投資局」が管轄となります。
地域によって異なる申請先
提出書類や申請手順は、全国共通の法律に基づいているものの、地域ごとの運用ルールや書式の違いが見られます。 たとえば、一部の地方では電子申請システムが導入されていたり、原本の提出が求められる箇所が異なったりします。
また、工業団地やハイテクパークに設立する場合は、DPIではなくその地区を管轄する管理委員会(Management Authority)が申請窓口となります。この場合、窓口の所在地も異なるため、事前に設立先の地理的・行政的区分を確認しておくことが必要です。
大使館・領事館での認証申請も可能?
日本国内で行う書類の領事認証は、在日ベトナム大使館または各地の総領事館にて受けることが可能です。この認証は、翻訳済み書類がベトナムで正式に受理されるための最終段階にあたります。
主な受付機関は以下のとおりです。
- 在日ベトナム大使館(東京都渋谷区)
- 在大阪ベトナム総領事館(大阪市中央区)
- 在福岡ベトナム総領事館(福岡市中央区)
認証申請時には、事前の公証および公印確認が完了している必要があります。また、原則として「翻訳済み文書と原文の両方」が必要であり、不備があると再提出を求められるケースもあります。
ベトナムで会社設立を進めるポイント
会社設立の準備が整っても、実際の申請や提出の段階で予想外の手間や修正が発生することがあります。ここでは、現地での手続きにおいて特に意識しておきたい実務上の注意点を整理してご紹介します。
提出期限と所要日数の目安(IRC・ERC)
IRCとERCそれぞれの申請と発給には以下の目安があります。
・IRC取得:通常案件はDPI申請後15営業日以内。工業団地等では5営業日以内の迅速発給もあります。 ・ERC取得:申請後、3営業日以内が法定期限。実務上は3〜5営業日程度が一般的です。
・不備対応:書類の追加提出が必要な場合、1〜2週間程度の追加期間が発生する可能性があります。
ERC申請はできるだけ速やかに行うことが望ましく、余裕あるスケジュール管理が重要です。
書類の整合性を保つためのコツ
申請書類は、複数の提出先や言語環境をまたいで作成・提出されます。そのため、記載内容にわずかな違いがあっただけでも、補正や再提出を求められることがあります。 氏名や住所、出資額、代表者の肩書などは、すべての書類間で統一されている必要がありますので、翻訳前の段階で、表記の揺れや記載漏れがないかを丁寧に確認しておきます。表記のブレを避けるには、原本と翻訳用のベース文書を同一ファイルで管理する方法が有効です。
翻訳・認証業務の外注のポイント
翻訳や公証、領事認証といった手続きは、書類の分量が多い場合やタイトな日程で進める際に外注が選択肢となることがあります。翻訳を外注する際には、ベトナム語での法的文書作成に慣れた翻訳者を選ぶことが重要です。
また、翻訳後に認証を受けるには、正確な用語選定と公証に適した体裁が整っている必要があります。実務上は、外注先の経験値や過去の認証実績を確認しておくと安心です。大使館での翻訳公証を希望する場合は、事前に対応可否を問い合わせておくとスムーズです。
最新の通達や法改正のチェック
ベトナムでは、会社設立に関する制度や運用方針が、通達や政令の発出によって変更されることがあります。たとえば、IRCとERCの同時申請を認めた通達02/2017/TT-BKHĐTは、その一例です。
制度変更は、投資計画局や法務事務所を通じて周知されることが多いため、現地の担当者や顧問との連携が必要です。日本国内で情報収集を行う際は、ジェトロや在ベトナム日本商工会議所などの公的機関が発信する最新情報が参考になります。通達やガイドラインは、発行年と施行日を確認のうえで内容を精査することが大切です。
まとめ
ベトナムでの法人設立は、事前の書類準備と各手続きの流れを正確に把握することが、円滑な進行につながります。投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)は、設立手続きの中核をなす重要な書類です。出資形態や設立地域によって求められる内容が異なる場合もあるため、各局の運用に即した対応が必要になります。
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