ベトナムの会社設立スケジュールは?期間・手続き・注意点など解説します
ベトナムで会社を設立するには、事前の準備から書類の申請まで、いくつかの段階があります。全体像を把握しておくことで、落ち着いて進めることができます。この記事では、設立までのスケジュールと注意点について詳しく解説します。
目次
- 1 ベトナムで会社設立にかかる期間
- 2 ベトナムで会社を設立するための準備と流れ
- 3 会社設立スケジュールの注意点
- 4 ベトナム会社設立後に必要な追加手続き
- 5 まとめ
ベトナムで会社設立にかかる期間
ここでは、設立に要する全体の期間を見ていきます。
ベトナムの会社設立は平均3〜6ヶ月
日本からの進出企業がベトナムに現地法人を設立する際、全体の流れとしては、3〜6ヶ月程度を想定しておくとよいでしょう。
この期間には、事前準備・書類作成・申請手続き・登記の完了、さらに印鑑や銀行口座の開設までを含みます。なお、プロジェクトの内容や申請書類の精度によっては、これより短縮されるケースもある一方、予期せぬ確認作業などで期間が延びることもあります。
設立スケジュールに影響する3つの要素
設立までの期間が前後する背景には、いくつかの明確な要因があります。ここでは特に影響が大きい3つの点を挙げてご紹介します。
会社形態の違いによる所要時間の差
どのような会社形態を選ぶかによって、手続きの進み方が異なります。たとえば、外国人が100%出資する有限責任会社(LLC)は比較的手続きが明確であり、平均して3〜4ヶ月ほどで設立できるとされています。但し、現地企業との合弁や、支店形態などでは、契約交渉や内部調整により時間がかかることがあります。
業種・外資規制の有無
進出を予定している業種が、外資に対して何らかの制限を設けている分野である場合、通常の設立手続きに加え、個別の許可や審査が必要となります。たとえば、教育・医療・人材紹介業などは、事前に規制当局の認可を得る必要があるため、そのぶん期間が延びやすい傾向にあります。情報通信業や一般的なコンサルティング業などは、比較的手続きが簡素で、審査の所要期間も短くなる傾向があります。
審査官によって処理スピードにばらつきが出る
同じ書類を提出しても、地域によって処理スピードに差が出ることがあり、担当官によっても審査期間が異なる場合があります。
ベトナムで会社を設立するための準備と流れ
会社設立にあたっては、最初にどんな準備が必要かを知ることが安心につながります。ここでは、手続きの流れを順を追ってご説明していきます。
STEP1|規制や外資条件の事前調査
はじめに、進出を考えている業種が外資企業に開放されているか調べることから始まります。規制がある分野では、許可が必要な場合もあり、そのぶん時間がかかることもあります。
STEP2|会社形態の選定と資本金の決定
会社形態には有限責任会社(LLC)や合弁会社、支店などの選択肢があり、税制や責任範囲、株主構成が将来的な運営に影響します。
資本金については特段の法的最低額は定められていませんが、当局は事業の実現可能性を評価するための目安としてみなし、一般的なサービス事業では2.5億ドン~10億ドン(約150万円~約600万円)が妥当とされています。特定の業種では法定資本要件があるため、対象業種に応じた確認も重要です。資本金は現地信用や銀行取引、採用面でも大きく影響します。
STEP3|登記用オフィスの選定と賃貸契約
会社設立の手続きを進めるためには、ベトナム国内に登記用のオフィスを確保することが必須です。これは「法人の所在地を特定できること」が登記の条件に含まれているためであり、手続きの初期段階で用意しておく必要があります。
特に注意すべきなのは、物件が法人登記可能な用途で登録されているかどうかという点です。住宅専用物件では原則として法人登記が認められておらず、商業用・事務所用などの用途に指定された物件を選定する必要があります。
オフィスは事前契約が必須。登記可能物件の確認も重要
オフィスは、法人登記を進めるうえで欠かせない要素のひとつです。契約前には、建物の用途区分やオーナーの同意、過去に登記実績があるかどうかを確認しておくと安心です。原則として、登記の際には正式な賃貸契約書の提出が必要とされますが、仮契約でも一部手続きが進められることもあります。物件選定に迷わないためにも、現地事情に詳しい不動産会社や法人設立支援サービスの活用が有効です。
STEP4|会社名の決定と重複チェック
会社名は設立登記において不可欠な要素であり、単なる商号の選定にとどまらず、ブランドや信頼性の面でも重要な意味を持ちます。
ベトナムでは、他社との重複や類似表現がある社名は登録できません。そのため、事前に「国家企業情報システム」を活用し、使用予定の名称が既存企業と重複していないかを確認する必要があります。また、会社名はベトナム語の正式名称に加えて、英語表記、略称など複数の名称が求められるため、社内外の使用シーンを想定して総合的に検討することが望ましいです。
STEP5|必要書類の作成・翻訳・公証
会社設立に必要な書類は多岐にわたり、ほとんどの文書は現地当局への提出に先立って翻訳・公証が求められます。特に外国法人による申請では、母国で発行された書類の正当性を証明する手続きが重要になります。
準備すべき主な書類には、親会社の登記簿謄本、代表者のパスポート、公証済みの定款、投資提案書などが含まれます。これらは、事業内容や出資割合に応じて変動することがあるため、最新の法令や申請窓口の要件を確認しながら進めていく必要があります。
日本で準備する書類と公証の流れ
日本で作成・取得する書類については、以下の流れで手続きを行うのが一般的です。
- 公証役場での書類認証
- 法務局での公証人押印証明
- 外務省でのアポスティーユまたは認証
- 駐日ベトナム大使館での領事認証
このプロセスには通常、数日から2週間程度かかることもあるため、全体のスケジュールに余裕を持って計画しておくことが重要です。
IRC・ERC用に追加で必要な書類とは
ベトナムで会社を設立する場合、まず「投資登録証明書(IRC)」を取得し、その後「企業登録証明書(ERC)」を取得するという流れになります。それぞれの申請では、共通書類のほかに独自の添付資料が求められます。
たとえばIRCでは、投資家の財務状況を証明する書類や事業計画書の提出が求められ、ERCでは株主リストや役員の経歴書などが必要になります。これらの書類は誤りや不備があると再申請になるケースが多いため、信頼できるコンサルタントと連携しながら準備を進めると安心です。
STEP6|投資登録証明書(IRC)の申請
書類が整ったら、まずは「投資登録証明書(Investment Registration Certificate:IRC)」の取得に進みます。この証明書は、外国資本がベトナムで事業活動を行う際に必要な公的な認可となります。
申請には、投資家の身分証明・財務証明・事業計画書などが必要となります。事業内容によっては追加資料の提出が求められる場合もありますが、必要書類が整っていれば、おおむね15〜30営業日程度で発行されます。
投資額と業種によって取得形式が異なる
IRCの審査方式は、投資プロジェクトの内容によって大きく二つに分かれます。
- 投資登録方式
投資額が3,000億ドン(約1.8億円)未満で、条件付き業種に該当しない場合。書類審査のみで発行され、最短15営業日で完了します。 - 投資審査方式
投資額が大きい場合や、教育・医療・不動産開発など、特定の規制分野に該当する場合は、中央機関による審査が必要になります。この場合、申請から認可までに約30〜45営業日を要することもあります。
STEP7|企業登録証明書(ERC)の申請
IRCを取得したあとは、「企業登録証明書(Enterprise Registration Certificate:ERC)」の申請に進みます。この証明書は、ベトナムにおける法人としての設立を公式に認めるものであり、法人格が付与される起点となります。
ERCの申請には、IRCの写しや定款、株主・取締役の構成情報、登録資本などの情報を記載した登録申請書類を提出します。手続きは管轄の省または市の計画投資局にて行われ、申請から3〜7営業日ほどで発行されます。
ERC取得で法人設立が完了
ERCが発行されることで、会社の設立手続きはひとまず完了となり、法人として活動を開始する準備が整います。なお、この時点で「法人番号(税コード)」も自動的に割り当てられるため、今後の税務申告や契約書の作成において必要となる基本情報のひとつとなります。
STEP8|国家WEBサイトへの情報登録(義務)
ERC取得後30日以内に、会社情報を国家企業登録情報ウェブサイト「NATIONAL BUSINESS REGISTRATION PORTAL」に登録することが義務付けられています。これは商業登記の一環であり、登録を怠った場合には罰金や会社設立無効の可能性もあるため注意が必要です。登録作業は、企業代表者または委任された行政代理人が行うのが通例です。登録が完了すると、掲載通知書が発行され、次の工程である印鑑作成に進めるようになります。
STEP9|印鑑の作成と登録手続き
ベトナムでは、企業印(社判)は公的文書や契約書で重要な役割を果たします。ERC取得後にすみやかに印鑑を作成します。印鑑には会社名と法人コード(税コード)の記載が求められ、かつては国家登録ポータルへの通知・掲載が義務でした。
ただし、企業法2020の改正後(2021年1月以降)、通知義務は撤廃されており、現在では任意となっています。通知手続きを行えば、掲載通知書が早ければ当日~数営業日中に発行されるケースもありますが、必ずしも必要ではありません。なお、印鑑が正式に使用可能になるタイミングは、法務管理の観点から適切な社内体制と合わせて判断すると安心です。
STEP10|銀行口座の開設と資本金振込
法人設立後は、ベトナム国内の銀行にて会社名義の口座を開設し、資本金を振込む必要があります。これは会社の設立完了後90日以内に行う義務があり、遅延が発生した場合は罰金や設立取消などの行政処分を受ける可能性もあります。
口座は2種類。資本金口座と運用用口座
会社設立後には、以下の2つの法人口座を開設するのが一般的です。
- 資本金口座
出資金を払い込むための専用口座。外貨建てでの開設が多く、資本金の記録に使用されます。 - 運用用口座
日常的な取引や給与支払いなどに使用するメインバンク口座。ローカル銀行が選ばれるケースも多く、利便性が重視されます。
口座開設にはERC、印鑑通知書、IRCなどの書類一式が必要です。銀行によっては追加資料や現地での面談が求められることもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
会社設立スケジュールの注意点
会社設立にかかる期間は、想定以上にばらつきが出ることもあります。特に外国企業として進出する場合、書類準備の遅れや現地での調整不足がスケジュール全体に影響することが少なくありません。ここでは、スムーズな進行のためにあらかじめ押さえておきたい注意点をご紹介します。
オフィス契約のタイミング
ベトナムでは、登記申請に際して法人の所在地を明記する必要があるため、オフィスの賃貸契約は設立手続きのごく早い段階で求められます。ただし、会社名や資本金が確定していない段階での契約には慎重な判断が必要です。契約を急ぐあまり、登記に適さない用途の建物を選んでしまうと、結果として再契約や申請の差し戻しにつながる可能性もあります。
出張で現地に滞在できる期間が限られている場合は、どの段階で現地入りし、どのタイミングで契約を進めるかを逆算しておきましょう。
書類の準備・翻訳・公証は余裕を持って進める
法人設立に必要な書類は多く、その一つひとつに原本・翻訳・公証という工程が必要になります。たとえば、日本で発行された登記簿謄本や印鑑証明書は、そのままでは使用できず、公証役場、法務局、外務省、ベトナム大使館という四段階の認証を経なければなりません。さらに、それらは現地語に翻訳したうえで提出する必要があります。
こうした手続きは一つひとつに時間がかかり、予想以上に日数を要することもあります。スケジュールに組み込む際は、「書類が揃えば即申請できる」とは限らないことを前提に、数週間程度の余白を持たせておくと安心です。
修正対応や役所対応は即時対応する
ベトナムでは、提出書類に対して追加説明や形式修正が求められることが珍しくありません。しかも、その通知はベトナム語で届くため、解読や対応の指示出しに時間がかかる場合があります。こうしたやり取りの遅延が、登記や許可証の発行時期に直接影響します。
対応を後回しにすればするほど、窓口での優先順位が下がってしまう傾向もあるため、可能な限り即日対応を意識しておくことが重要です。現地の手続きが属人的であるという事情も含め、修正対応に時間的ゆとりと即応体制を備えておくことが大切です。
信頼できる現地パートナーや代行業者の選定
日本側でどれほど準備を整えていても、現地での対応が不十分だと、予定していたスケジュールが思うように進まない可能性があります。特に、オフィス探し、書類提出、役所との調整など、現地でのフットワークが必要な工程は、信頼できる代行業者や法人設立コンサルタントとの連携があればスムーズに進める事が出来ます。
安価さだけで選んでしまうと、問い合わせへの反応が遅かったり、専門知識が不十分で書類のやり直しが続いたりといったトラブルも報告されています。選定時には、対応の丁寧さ、実績、費用だけでなく、過去のサポート体制や現地ネットワークの強さも含めて比較・検討しておくとよいでしょう。
ベトナム会社設立後に必要な追加手続き
法人設立が完了した後も、実際に事業を開始するまでにはいくつかの追加手続きが必要となります。業種や事業規模によって対応が異なる場合もあるため、あらかじめ必要な手続きの全体像を把握しておくとよいでしょう。
必要に応じて事業ライセンスや許認可を取得する
会社設立後にすぐ事業を始められるとは限らず、特定の業種では追加のライセンス取得が求められます。
たとえば、広告業、教育関連業、不動産仲介業、建設業などは、企業登録証明書(ERC)取得後に、それぞれの所管官庁から事業実施許可を得る必要があります。
これらの許認可には、追加の事業計画書や担当者の資格証明書、契約書の写しなどが求められることもあり、書類不備や確認遅れがあると実務開始が遅れる可能性もあります。設立段階から業種の要件を整理し、あらかじめスケジュールに含めておくことが望ましいです。
労働許可証(ワークパーミット)取得のために
日本人や第三国籍の社員が現地で勤務する場合、労働許可証(ワークパーミット)の取得が必要です。この許可は、就労開始の前に取得しなければならないため、会社設立後すぐに動き出すのではなく、登記完了と同時に準備を始めましょう。
申請には、雇用契約書、健康診断書、学位証明書、職歴証明書、無犯罪証明書などが必要になります。これらの書類も翻訳・公証が求められるため、日本での取得には一定の時間がかかります。また、ビザの種類によってはワークパーミット取得が免除される条件もあるため、滞在予定や活動内容に応じて適切な申請ルートを確認しておくことが重要です。
設立後の税務・会計処理にも注意が必要
会社設立後は、税務署への初期登録や会計処理体制の整備も速やかに行う必要があります。たとえば、付加価値税(VAT)申告のための電子税務アカウント開設、電子インボイスの発行登録、会計年度の設定、税務代理人の選定などが必要です。
これらはベトナム国内の法令に基づいて行われるため、日本の制度と異なる点が多く、初期対応を誤ると後の修正や追徴課税につながることもあります。現地の会計事務所や税務コンサルタントと連携し、事業開始前に帳簿形式や税務申告スケジュールを整理しておくと、長期的な運営においても安定性が高まります。
まとめ
ベトナムで会社を設立するには、事前の調査から登記申請、口座開設やライセンス取得に至るまで、いくつかの段階を丁寧に進めていく必要があります。特に外資企業としての進出では、書類や手続きの流れに独特のルールがあるため、事前に全体像を理解しておけると落ち着いて対応しやすくなります。
この記事でご紹介したスケジュールや注意点が、これから現地法人の設立を考えている方にとって、少しでも安心材料になれば幸いです。すべてを完璧に整えることよりも、要所を見逃さず、一つひとつを確実に進めていくことが、スムーズな設立と運営の土台につながっていきます。
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