ベトナムの法人税とは?CITの基本知識と優遇制度、税務対策まで徹底解説します
ベトナムでビジネスをするなら、法人税(CIT)のしくみや優遇制度を知ることが成功のカギです。基本ルールから節税ポイントまで、詳しく解説します。
目次
ベトナム法人税の基本概要
ベトナムにおける法人税制度は、企業活動の実態に応じて課税対象や税率が細かく定められています。ここでは、法人税の基本的な仕組みや課税対象となる法人の種類について確認します。
ベトナムでかかる主な税金4つとは?
ベトナムで事業を行う際に関係する主な税金は次の4つです。
- 法人所得税(CIT):企業の利益に対する税。基本は20%。一部業種は32〜50%。
- 付加価値税(VAT):取引にかかる税。標準10%、一部は5%・0%。
- 個人所得税(PIT):個人の収入にかかる税。居住者と非居住者で異なる。
- 外国契約者税(FCT):海外企業がベトナムでサービスを提供した際にかかる税。
課税対象となる法人の種類(内国法人と外国法人)
ベトナムでは、法人の設立形態や活動実態に基づいて課税対象が区分されます。法人は大きく「内国法人」と「外国法人」に分類され、それぞれ異なる課税基準が適用されます。内国法人とは、ベトナム国内法に基づき設立された法人を指します。これらの法人は、ベトナム国内外で得たすべての所得に対して法人税の課税対象となります。いわゆる全世界所得課税の原則が適用されます。
一方、外国法人は、ベトナム国外で設立された法人でありながら、ベトナム国内で恒久的施設(PE)を有し、事業活動を行っている場合に限り、ベトナム国内源泉所得に対して課税されます。具体的には、支店やプロジェクトオフィスなどが該当し、所得の種類や取引の形態によっては外国契約者税の対象にもなります。
駐在員事務所については、商業活動を行わず市場調査や情報収集などに限定されているため、原則として法人税の課税対象には含まれません。法人の設立形態により税務上の扱いが異なるため、進出前に制度の区分を正確に確認することが重要となります。
以下は、ベトナムにおける法人の種類と法人税の課税対象範囲のまとめ表です。
| 分類 | 設立場所 | 主な活動内容 | 法人税の課税対象範囲 |
| 内国法人 | ベトナム国内 | 通常の事業活動 | ベトナム国内外すべての所得 |
| 外国法人(PEあり) | ベトナム国外 | ベトナム国内に恒久的施設を持つ事業活動 | ベトナム国内源泉所得 |
| 外国法人(PEなし) | ベトナム国外 | 恒久的施設なし、非継続的な取引など | 原則として課税対象外(FCT課税あり) |
| 駐在員事務所 | ベトナム国外 | 市場調査・情報収集のみ | 課税対象外(収益活動不可) |
法人所得税(CIT)の税率・申告・課税方法
法人所得税について理解を深めるうえで、基本となるのが税率や申告スケジュール、どのような事業形態が課税対象になるのかといった仕組みです。ここでは、ベトナムの標準税率と他国との比較、実務に直結する申告期限、対象となる法人の範囲についてご紹介します。
法人所得税の標準税率と国際比較
ベトナムでは、法人所得税の標準税率が20%と定められています。これはアジア各国と比べても比較的低い水準といえ、進出を検討する企業にとっては魅力のひとつとされています。ただし、資源開発など一部の事業では、32%から50%の高い税率が適用されることもあります。事業の内容により課税条件が変わる点には注意が必要です。
ベトナムとアジア主要国の税率比較表
以下は、アジア主要国における法人税率の一例です(いずれも2024年時点での一般的な税率)。
| 国・地域 | 法人税率 |
| ベトナム | 20% |
| タイ | 20% |
| フィリピン | 30% |
| 香港 | 16.5% |
| 中国 | 25% |
| マレーシア | 24% |
申告スケジュールと日本との違い
法人所得税は、所定のスケジュールに沿って正確に申告・納付する必要があります。申告手続きの流れや期限は、日本と異なる部分もあります。
申告期限は会計決算後3ヶ月以内
法人税の確定申告は、会計年度の終了日から90日以内に行う必要があります。たとえば、12月決算の企業であれば、翌年3月末が提出期限となります。この期間内に、税務申告書の作成と納税までを済ませることが求められますので、あらかじめ準備スケジュールを立てておくことが大切です。
四半期ごとの予定納税と年間申告の組み合わせ
ベトナムでは、法人所得税の納付は年間の確定申告とは別に、四半期ごとに仮納税を行う仕組みが採用されています。各四半期の暫定納税は、翌四半期の終了後30日以内に実施する必要があり、これにより年間を通じた納税負担の平準化が図られています。年間申告とあわせて、こうした定期的な支払スケジュールを事前に把握しておくことが重要です。
株主総会との関係
日本では、法人税の申告は株主総会の承認を経た決算に基づいて行う必要がありますが、ベトナムではそのような法的要件は設けられていません。ベトナムでは、会計年度末から90日以内に申告を行うことが義務付けられており、株主総会の開催とは直接の関係がない点が特徴です。
課税対象法人と非課税の事業形態
法人所得税が課される対象には、いくつかの分類があります。設立の形態や活動の実態により、課税の有無が分かれます。
内国法人・外国法人の分類と課税の有無
ベトナムで設立された法人は「内国法人」とされ、全世界所得に対して法人税が課されます。一方、外国の法令に基づいて設立された「外国法人」は、ベトナム国内に恒久的な施設(オフィスや工場など)があるか、ベトナムを源泉とする所得がある場合にのみ課税対象となります。
また、駐在員事務所については、現地での収益活動を行わないことを前提に、法人所得税の課税対象外とされています。進出形態を選ぶ際には、こうした税務上の扱いも判断材料となります。
法人所得税の計算方法と損金処理ルール
法人所得税を正しく申告するには、課税対象となる所得の計算方法と、どの費用が経費として認められるかを理解しておく必要があります。ここでは、ベトナムの法人税制度における算出式や費用処理の基本をご紹介します。
課税所得の計算式と各項目の定義
課税所得は、収入から費用を差し引いたうえで、さらに非課税所得や過去の繰越欠損金を考慮して計算されます。計算式は次のとおりです。
課税所得 = 総所得 -(非課税所得 + 繰越欠損金)
各構成要素の概要は以下のとおりです。
収入・費用・その他所得の取り扱い
「収入」とは、物品の販売やサービスの提供など、通常の営業活動から得られる金銭の対価を指します。これには、販売代金、役務提供料、契約によるサーチャージや手数料などの付随的収益も含まれます。
「費用」は、企業が事業遂行のために支出したコストのうち、証憑(領収書など)を伴い、かつ事業と直接関係があると認められるものに限って損金算入が認められます(Circular 78/2014/TT-BTC第4条)。「その他所得」には、たとえば株式譲渡、固定資産の売却、リース資産の返還時収益、為替差益などが該当します。これらは通常の事業とは異なる活動による収入ですが、法人税の課税対象に含まれます。
非課税所得の具体例
ベトナム法人税法において、以下のような所得は課税対象から除外されることが定められています(Decree 78/2014/ND-CP, Article 4 など)。
- 農業・水産業・林業など自然資源に関する特定条件下の所得
- 科学研究および技術開発に由来する収益
- 障がい者、HIV感染者、薬物依存者などの雇用支援による所得
- 少数民族や服役経験者などに対する職業訓練関連事業による所得
- 国内法人から受け取った配当金(※海外法人からの配当は課税対象)
- 国家・地方自治体からの補助金や寄附金、指定された国際援助資金
これらは、社会政策上の配慮や国の奨励対象とされている事業・収入であり、法人所得税の課税対象から免除されます。
繰越欠損金の取り扱いと注意点(最大5年)
事業年度において損失(欠損金)が生じた場合、その金額は翌年以降の課税所得から控除することが可能です。繰越可能な期間は、損失が発生した事業年度の翌年から起算して最大5年間と定められています(Law on Corporate Income Tax, Article 9)。
この繰越制度により、企業は短期的な赤字を中長期で相殺し、税負担を緩和することが可能です。ただし、以下のようになります。
- 損失の「繰戻し」(過年度の利益への適用)は認められていません。
- 税制上の免税・減税(優遇)期間中であっても、繰越欠損金の起算は赤字発生の翌年から5年以内とされます。
そのため、優遇税制の適用を受ける際には、繰越欠損金の使用タイミングを慎重に管理する必要があります。
損金算入される費用の条件とは
費用が法人所得税の計算上「損金」として認められるには、一定の条件をすべて満たす必要があります。日々の経理処理においては、この基準を意識して管理を行うことが求められます。
証憑の要件・インボイスの形式・非現金決済
損金として認められるには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。
- 事業活動と直接関係していること
- 法令に準じたインボイス(VATインボイス)や契約書など、正式な証憑があること
- 取引金額が2,000万ドン以上の場合は、銀行振込などの非現金決済が行われていること(旧ルール。※2025年7月以降の新ルールについては後述)
これらが整っていなければ、たとえ実際に支払った費用であっても、税務上は損金として認められません。帳簿だけでなく、証憑類もあわせて適切に保管しておくと安心です。
【最新情報】2025年7月1日以降のルール改正
2025年7月1日から、非現金決済が必要とされる取引金額の基準が大きく変更されました。
新ルールのポイント:
- 5,000,000VND(500万ドン)以上の取引は、非現金決済が義務化
- 銀行振込や合法的なキャッシュレス手段での支払いが行われていないと、経費として損金算入できなくなります
つまり、以前は2000万ドン以上の取引だけが対象でしたが、2025年7月以降は500万ドン以上の取引が対象となるため、より広範な取引に注意が必要です。
実務上の対策として:
- 取引先への支払いはなるべく振込などの非現金手段を徹底
- インボイス、契約書、銀行明細を必ずセットで保管
- 会計ソフトや記録システム上でも、現金/非現金の区別を明確に残す
損金不算入となる主な費用項目
一見すると事業に関係しそうな費用でも、損金として認められない場合があります。こうした費用は「損金不算入」とされ、法人税の計算上は控除できません。
ゴルフ費用、罰金、証憑不備など実例多数
代表的な損金不算入項目には、以下のようなものがあります。
- ゴルフのプレー費用や会員権の購入費用
- 交通違反などの行政罰に伴う支払い
- 正式なインボイスが発行されていない支出
- 社内規定に基づかない賞与や手当
- 証憑の内容に不備がある経費(例:住所や社名の誤記など)
これらは、税務調査でも特に指摘されやすい部分です。
ベトナムの優遇法人税制度のポイント
ベトナムでは、特定の分野や地域での事業展開を促進するため、法人税に関するさまざまな優遇措置が設けられています。進出を検討する企業にとっては、これらの制度を活用できるかどうかがコスト面での重要な判断材料となります。
ここでは、対象となる業種や地域、優遇の具体的な内容、活用時の注意点について見ていきます。
対象となる業種や地域の一覧
税制上の優遇措置は、社会的に必要とされる分野や、経済的な支援が必要とされる地域を対象に設計されています。まずは、どのような業種や地域がその対象となるのかを整理しておくとわかりやすいですね。
環境・ハイテク・製造・医療・教育分野
以下のような分野で事業を行う法人は、優遇税率や免税措置の対象となる可能性があります。
- 環境保護関連事業(リサイクル、再生可能エネルギーなど)
- ハイテク分野(ソフトウェア開発、研究開発など)
- 製造機械・精密部品などの高度な製造業
- 医療・バイオテクノロジー・製薬産業
- 教育・職業訓練機関の設立・運営
これらは、ベトナム国内での発展を国家として優先している分野とされ、投資促進政策の一環として税制面でも支援されています。
経済的に困難な地域や工業団地
優遇制度は、地域にもとづいても適用されます。具体的には以下のような場所が該当します。
- 経済的に遅れている地方(山間部や農村部など)
- 国家指定の経済開発特区
- 認定された工業団地内での事業活動
これらの地域では、法人所得税率の軽減に加え、免税・減税の年数が長く設定される傾向があります。立地選定の段階から、こうした制度の有無を確認しておけると安心です。
優遇税率と免税・減税期間の概要
優遇対象と認定された場合、通常の20%ではなく、さらに低い税率が適用されることがあります。また、一定期間の免税や減税措置が設けられる点も大きなメリットです。
10%・20%の税率と最大15年の適用期間
事業内容や投資規模によっては、10%または20%の低税率が適用されます。この特別税率は最長で15年間認められる場合もあり、通常税率との差によって、税負担を大きく軽減できる可能性があります。税率や期間は、プロジェクトの審査結果や政府の承認によって個別に決定される仕組みとなっています。
2~4年免税+4~9年の半減税のパターン
多くの場合、税率の優遇に加えて「免税+減税」の組み合わせも用意されています。たとえば以下のようなパターンがあります。
- 初年度から2〜4年間は法人税が全額免除される
- 免除期間終了後の4〜9年間は、法人税が50%に軽減される
こうした措置をうまく活用することで、進出初期の資金負担を抑え、長期的な経営計画を立てやすくなります。
雇用創出による追加優遇制度の検討動向
ベトナムでは、法人税の優遇制度は、主に事業分野や立地条件などに基づいて適用されます。雇用創出そのものを直接的な税制優遇の要件とする規定はありませんが、一定の社会的意義を有する投資プロジェクトにおいては、雇用拡大の要素が間接的に評価される場合もあります。
とくに地方経済の活性化に寄与するような事業では、関係機関の判断により、追加的な優遇措置が認められるケースもあります。こうした優遇は原則として個別審査の対象となるため、事前に管轄機関との十分な協議が重要となります。
優遇適用と欠損金の使い分け戦略
税制優遇と繰越欠損金は、いずれも法人税負担を抑える手段ですが、それぞれの適用には注意点があります。特に、免税・減税期間中に欠損金を計上しても、その期間が繰越年数に含まれてしまうため、結果として十分に控除が活用できない可能性が出てきます。
そのため、初期の赤字が予測される場合は、あえて優遇適用の開始時期を調整したり、適用申請を遅らせるといった対応も検討されることがあります。どちらの制度も活用するには、5年間の繰越期間を踏まえた上で、事業の利益予測や設備投資のタイミングを冷静に見極めることが大切です。
移転価格税制とグローバル課税の最新動向
関連企業間の取引があると、価格設定が適正かどうかを税務当局に判断されることがあります。また、グローバル水準の最低税率への対応が求められるようになっています。
ここでは、関連者の定義や文書化義務、グローバルミニマム課税への対応、そして具体的な取引に関する注意点についてご説明します。
関連者定義と移転価格文書化義務
ベトナムでは、関連者間の取引について「独立企業間価格」に基づく価格設定が求められ、取引内容の文書化が義務づけられています。関連者とは、直接・間接で25%以上の所有、経営支配関係、または一定以上の貸付・保証関係などに該当する法人・個人を指します。
文書化は三層構造となっており、国内取引でもマスターファイル、ローカルファイル、国別報告書(CbCR)が必要です。売上規模やEBIT比率が一定以下であれば、免除される場合もあります。税務調査が入った場合には、10営業日以内に提出することが求められる点にも注意が必要です 。
グローバルミニマム課税(QDMTT・IIR)対応
2024年1月1日以降、ベトナムではOECDのPillar 2に基づき、国内最低トップアップ税(QDMTT) と 所得包括規則(IIR) が導入されました。QDMTTは多国籍企業のベトナムでの所得が15%に満たない場合に補填する制度で、申告期限は会計年度末から12か月以内です。一方、IIRはベトナム本社を中心とした海外拠点の低税率所得を取り込む仕組みで、初年度は18か月以内に申告し、次年度以降は15か月以内となります。
関連者間取引の否認リスクと証明要件
税務当局は、選定した比較対象の信用性や取引価格の合理性に厳しい視線を向けています。近年、調査が高度化しており、特にロイヤリティや管理サービス料の妥当性、比較企業の選び方、利益率の変動について厳しくチェックされる傾向にあります 。また、実体が乏しい関連者間取引については「形だけ」の取引と判断されるケースもあり、十分な説明資料の準備が必要です 。
銀行借入・ロイヤリティ取引での注意点
関連企業からの借入金やロイヤリティ支払いについては、移転価格と過度な利払い制限(例:EBITDAの30%上限)が適用されることがあります 。利息が制限額を超える場合、損金不算入となり、5年間にわたって繰越しが必要となります。一方、ロイヤリティ支払いについては、その内容が関連者への利益移転と見なされないよう、合理性・実体性に関する資料が求められるため、契約やサービス内容の整理・保存が重要です 。
申告・納税手続きと税務リスク対策
ベトナムにおける法人税関連の申告や納税手続きには、日本と異なる点が多く見られます。また、取扱いを誤るとペナルティの対象となることもあるため、実務上のリスクを正しく理解しておくことが大切です。ここでは、特に注意すべき4つのテーマに焦点を当ててご紹介します。
FCT(外国契約者税)の納税方法とみなし税率
ベトナム国外の企業が、現地でサービス提供や技術支援を行う際に適用されるのが「外国契約者税(FCT)」です。これは法人税と付加価値税を組み合わせた性質を持っており、取引の種類によってみなし税率が定められています。納税は、原則として支払先であるベトナム企業が源泉徴収し、税務当局に申告・納付する仕組みです。たとえば、サービス提供に対しては法人税5%+VAT5%の合計10%程度が一般的です。
駐在員・出張者に係る費用と税務扱い
ベトナムに駐在員を派遣する場合、その給与や生活費、渡航費などが法人税や個人所得税の対象となるかどうかは、費用の性質によって異なります。たとえば、親会社が日本で支給している給与の一部がベトナム法人に再請求される場合、その金額は「サービス提供」と見なされる可能性があり、FCTの対象となることがあります。また、出張者がベトナムで一定期間業務を行う場合も、日数や業務内容によっては恒久的施設(PE)認定につながることがります。
フリンジ・ベネフィットの損金処理条件
住宅手当などの福利厚生支出が法人税の損金算入となるには、雇用契約や社内規定に明記し、従業員所得としてPITに含める必要があります。また、福利厚生費の総額が年間の平均給与の1か月分以内であり、証憑や非現金決済の要件を満たすことが求められます。
インボイス記載ミス・税関在庫と課税トラブル
日々の経理業務では、インボイス(請求書)の記載内容にも注意が必要です。インボイス上の会社名、住所、税コード、金額、品目のいずれかに誤記があると、その費用が損金算入できなくなることがあります。また、輸入商品に関しては、税関での在庫確認と実際の会計帳簿との間に差異がある場合、不正と判断されるリスクもあります。在庫が記録と一致しているか、税関情報と整合しているかを定期的にチェックしておくと安心です。
税務調査・異議申し立ての流れとポイント
税務調査を受ける機会が訪れたとき、調査結果に異議がある場合の対応方法も理解しておけると安心です。ここでは、調査の基本プロセスと、実務上の注意点をご紹介します。
税務調査の通知から終了までのプロセス
ベトナムでは、税務調査は事前通知を前提とした計画的なプロセスで進められます。
税務調査の主な流れ
- 通知書の送付
税務当局は、調査の数日前に書面で通知します。通知書には、調査の目的・対象期間・実施日などが記載されます。 - 現地調査の実施
調査官が企業を訪問し、以下を確認します。
・会計帳簿や証憑類の確認
・各種取引や税務処理に関するヒアリング
・納税状況や記帳状況の整合性チェック - 調査結果の提示(暫定段階)
調査終了後、税務当局は指摘事項の一覧を提示します。納税者にはこの内容に対して意見を述べる機会が与えられます。 - 最終報告と是正勧告
納税者の回答を踏まえ、税務当局は「最終報告書(final audit result)」を発行し、必要に応じて追徴課税や修正申告の指示が行われます。 - 納税対応・修正申告
指摘があった場合は、定められた期間内に追加納税や修正申告を行う必要があります。
異議申し立て・訴訟
調査結果に不服がある場合、まずは通知書受領から90日以内に第一異議申立書を税務署に提出する必要があります。その後、税務署の判断に不満があれば、さらに30日以内に上級税務当局へ第二異議申立が可能です。それでも合意が得られない場合は、行政裁判所に提訴できます。
調査で否認されやすいポイントとは
税務調査では、形式上の不備や根拠の曖昧な取引が指摘されやすくなります。たとえば、以下のような点は特に注意が必要です。
- インボイスや契約書の記載内容に誤りや不備がある
- 取引先との関係が不透明なまま、支出が計上されている
- 関連者間取引における価格の妥当性が説明できない
- 福利厚生費などの支出について社内規定や証明資料がない
これらは実際の取引があっても、証憑の不備により損金として認められないケースがあります。
今後の税制改正の見通しと注意点
現在、ベトナムでは税制の強化や優遇見直しなど、経済成長と財政収支のバランスを図るべく多くの改正が検討中です。進出企業にとって、今後の動きを把握しておくことは重要ですので、注目すべきポイントをご紹介します。
税収強化の動きと罰則強化
税務当局はVAT還付の手続きを見直し、大口取引や経費証憑に対する監視を強化するとともに、不正や申告漏れが判明した場合の罰則も厳格化しています。これに対し、申告・納税手続きの電子化や簡素化も進められており、利便性向上と違反への速やかな対応が取られる体制が整いつつあります。
優遇税制の見直しや追加投資
2025年には、法人税法の改正が施行予定であり、優遇税制の対象分野や対象地域に変更が入る可能性があります。新法では、一定売上以下の中小企業向け優遇税率(15%・17%)の導入や、関連会社による優遇の濫用防止策が盛り込まれています 。
さらに、追加投資分については従来の優遇対象外となるケースも想定されるため、既存事業と拡張投資との関係性も確認が必要です。
コロナ関連支援措置の継続と終了
COVID‑19対策として導入されたVATの減税措置(標準税率10%→8%)は、直近の経済支援策として2026年末まで延長が決定されています。一方、他の支援措置や優遇措置については段階的に縮小される可能性があり、終了時期の把握を怠らないことが重要となります。
まとめ
ベトナムでの法人設立や事業展開を検討する際、法人税(CIT)のしくみや税制上の優遇措置を正しく理解しておくことはとても大切です。これからベトナムに進出される方、すでに進出済みで体制を見直したい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
ベトナムにおける現地法人設立からマーケティング・営業活動に至るまで幅広くサポートしております。まずは、問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にご相談くださいませ。
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